天界の王宮 決戦 (SF)

序章『 天界 』

 『 天界∞ 』は時が経ち、且つての戦乱の記憶が薄れて、天使達が『 大天使長 』へと成長を遂げていた。その空間的な広がりは無限∞であり、その遥か高みには『 神 』が座しておられた。
 『 神の王子達 』は増えて、それぞれに『 神の王族 』としての気質と器量を魅せて、無限の『 天界∞ 』のあちらこちらで、『 神 』の栄光の為に治世を行い、それと共に『 大宇宙∞ 』のかつての戦友であり、友人達である『 大宇宙∞の王族達 』に知識と厳格と親愛の情熱を授けていた。

 そんな永い時間の経過が、『 天界∞ 』に住む住人達に高度な倫理観と正義感と『 神 』への忠誠心を育んで行っていた。

 地獄からの暗黒の気配は、ゆっくりと『 大宇宙∞ 』に入り込んできた。ある黄金銀河団の大王がサターンの誘惑を受けて、心を打ち砕かれて、サターンを黄金の銀河団へと迎い入れた。更に、他の銀河団の大王達もそれに追従して、『 神 』への忠誠心を打ち砕かれて、『 大宇宙∞ 』に不穏な気配が流れた。

 各星系に待機して、その様子を伺っていた老練な大天使長の1人が、直ぐに異変を感じ取り、部下の大天使長10,000に、その星雲へと向かう事を指示して、『 天界∞ 』へと戻りその異変を『 神の王族 』へと報告した。
 第1王子は『 天界∞ 』での全ての祭り事を取り仕切る大宰相に当たる任に就いていた。第2王子は『 天界∞ 』での全ての住人を取り纏める任に就いていた。それぞれに子が複数いて、天界の重鎮として、その任に当たっている。
 第3王子マテリア、第4王子バトリス、第5王子スペーシタイム、第6王子ギルシトは、先の大戦から、彼等の子達をして大天使長達を纏め上げる任に就かせていた。

 老練な大天使長は、過去の大戦に参戦した古参のものであった。直ぐに、第1王子の元に行き、第1王子が『 天界∞ 』で執政をしていた宮殿へと向かった。第1王子へ面会をすると同時に、第2王子も瞬間的に移動をしてきて現れ、『 大宇宙∞ 』での怪しい動きがある事を報告した。
 「 大宇宙∞ での不穏な動きは、我々も既に感じている。よくぞ、報告に参られた。直ぐに、4王子達に使いの者を出す。彼等も感じているだろう。この恐ろしい静けさを 」
第1王子がそういって、老練な大天使長を労った。
 「 あまりにも、過去の大戦から時間が経過して、我々も『 大宇宙∞ 』との関係がおろそかに成っていた事はある。『 天界∞ 』に住む天使達も成長をして、今や立派な者達に成った。我々は『 天界∞ 』に住む住人であり永遠の魂とは言え、『 神 』のみが全知全能でありお伺いを立てようと思うが、『 神 』は何もおっしゃっておられない 」
第2王子が、そう諭した。

 「 かの名誉職にある、神聖な4大大天使長をここに呼んで意見を聞いてみよう 」
 すると、既に第1王子の宮殿には、神聖4大大天使長達が、現れていて、それぞれに広い白金色に輝く宮殿の中の、他の大天使長達の中に紛れていた。
 神聖4大大天使長達の輝きは凄まじく、宮殿の広大な大広間の採光を一瞬にして、金色いろに変えていた。
 「ミカエル、ラファエル、ウリエル、ガブリエル、久しいな。事の次第は、感じている事だろう。意見を問いたい 」
 白色に金色の文様を施している甲冑に身を包んだ彼等は、他の大天使長達がいるにも関わらず、次の様に述べた。
 「 この事態は、かの大戦が終わった時から予知していたことです。『 神 』にも意図がおありになされたのでしょう 」
ミカエルが答えた。
 「 既に、『 大宇宙∞ 』のそこかしこが、サターンの誘惑に乗っている。しかし、迎撃の準備は出来ている 」
ラファエルが答えた。
 「 宇宙空間には、偵察の大天使長達を配置している。奴等の動きは、察知している。私見だが、私に『 神 』が勅命を下せば、私だけでもサターンを平定してみせるが 」
ウリエルが答えた。
 「 このガブリエルこそが、サターンを平定するに相応しい。『 神 』から私への勅命が来るはずだ 」
ガブリエルが答えた。

 第1王子と第2王子が思案をしていると、やはり大きな宮殿に『 神 』の輝きと光沢を伴った栄光の光が宮殿全体と宮殿内部を満たした。
 すると、そこにいる皆が膝を付き、『 神 』の言葉を待った。『 神 』は彼等に語り掛けた。
「 サターンは地獄で力を付けている。簡単には打ち破る事は敵わないだろう。4王子達とその子達を呼ぶこと。私自らが彼等を指揮して、平定を果たそう。この度は、地獄までサターンを追い落として、未来永劫、サターンの『 大宇宙∞ 』への影響を無くす事とする 」

 『 天界∞ 』の中の全ての者が、その意志を聞いた。

第1章『 銀河団の大王達 』

 黄金銀河団を中心に、その周りの銀河団や星系がサターンに屈した。しかし、『 大宇宙∞ 』には、且つての大戦に参加した、大王達が沢山存在していた。

 それらの銀河団や星雲の大王達は、連携をして、サターンの進軍を抑え込んでいた。暗黒に堕ちた銀河団の数は数知れず、またそれに対抗をしていた銀河団の大王達も無数に存在をしていたのである。
 その中でも、特に勇猛果敢な大王が8名居た。それらは、サターンの進行を抑えるべく、四方八方に使いを遣わして、自らも兵を率いて出陣をした。
 銀河団・銀河群の大王達にはそれぞれ特徴があった。その姿形は違えども、治世に優れて平和的な者、勇猛果敢な度量に優れた勇者、静寂を好む者、そして正義を愛し『 神 』を崇める者達である。

 銀河団・銀河群の大王達は、それぞれに複雑な言語思念を持ち、その意志疎通は、純粋な者か、勇敢な者か、厳格な者か、静かなる者か、愛情溢れる者か、岩の様に信念の強い者か、等で行われていた。意志疎通は、魂と魂の共鳴・共感であった。
 特に、勇猛果敢な大王の中には、他の大王にとっては不快な面も持ち得ていたが、『 神 』の存在が、そのいきり立つ荒ぶる魂を鎮めて、それぞれの『 大宇宙∞ 』での銀河団・銀河群での玉座に鎮座させていて、決して他を侵す者は居なかった。

 8名の者は、銀河団・銀河群の大王達であり、そして、『 神 』を信仰した先の大戦の勇者達の末裔であった。それぞれに、大小の領土を『 大宇宙∞ 』の中に有していて、かの大戦で『 神 』の軍に参列をした者達である。
 大きな銀河団・銀河群の領土を有するものから、その複雑な発音と言語と思念を略して、天頂銀河団の大王タップスカイエル、白銀銀河団の大王ホワイトナイトエル、純紫銀河団の大王ヴァイレットピューアエル、黄緑銀河団の大王オータンフォーレスエル、黒目銀河団の大王アイブラッドエル、聖霧銀河星雲群の大王セイントウォーリアエル、赤色銀河星雲群の大王ロッソスターズエル、最後に、輝糸銀河星雲群の大王シャインドストレイトエル、である。
 各大王達は、近隣の銀河団・銀河群がサターンに陥落されて行く中、孤軍奮闘し、または遠近の銀河団の大王達に使者を出して、その対応に当たらせた。

 そんな一進一退の老略が為されるさなか、『 大宇宙∞ 』のそれぞれの銀河団・銀河群へと、大天使長達の使者が到達して、それぞれの大王達へと目通りして、事の重大さを話し合い、決してサターンに組みする事の無い様に、『 天界∞ 』からの通達であると諭した。
 しかし、サターンはその間隙を縫って、武力で他の銀河団・銀河群を屈服させたり、心の隙を突いてその仲間へと誘って行った。

 真っ先に、サターンの侵略を抑えようとして動いたのが、天頂銀河団の大王タップスカイエルと、白銀銀河団の大王ホワイトナイトエルであった。
2大王は、その思念でサターンの侵略を察知して、暗黒の気配を感じ取り、各銀河団・銀河群へと使者を四方八方に送りながら、それぞれ、兵1,000億騎と、兵500億騎を従えて、サターンの進出する行先を阻んで布陣した。
何れも、勇猛果敢な大王達の眷属であり、2大王は連携して、それぞれサターンの将の行く手を阻んだ。
戦端は開かれていて、布陣の先頭付近では、光の閃光が迸り、暗黒の渦とのせめぎ合いが起こっていた。
大王タップスカイエルは宇宙空間の中、玉座に座り、周りをその王子達が固めていて、善戦・苦戦により、それぞれが部下の兵を引き連れて前線へと参戦をしに出て行ったり、後退をしてきて休息を取っていた。
大王ホワイトナイトエルは、大王タップスカイエルと10万光年程離れた所に布陣をしていて、その戦いぶりを眺めていた。そうして、その劣勢と見ると、前線の兵を動かして彼の援護をしていた。

 サターンの将はその内に総崩れと成り、1銀河団から撤退をして行った。後に残った銀河団の大王を捉えると、その姿は老いていて生気が無く、ただただ、『 神 』への許しを請う祈りを繰り返していた。
 そこに『 天界∞ 』から、先行して来た、『 神 』の第3王子マテリアと500万の大天使長の姿があった。
 大王タップスカイエルは、装飾豊かな甲冑に身を包んでいて玉座から立ち上がり、光輝く白金の鎧甲冑に身を包んで現れたマテリアと再会を祝い、抱擁を交わした。

第2章『 旧友 』

 『 大宇宙∞ 』の彼方に、『 神 』の王族の来訪を受けた星雲が多々ある。そのどれもが、『 神 』の栄光に満ちていて、『 神 』への信仰心が強かった。
 一度、『 神 』の王族の来訪を受けた星雲は、その来訪を代々子孫に物語として受け継いで行き、その土地の言語や文字で、伝説物語として未来永劫まで語り継がれている。それらの物語は、時として戦記物、時として友情、愛情、喜劇、悲劇、希望としてその土地に遺されて行く。
 物語は、文化の発展や科学の進化とは懸け離れて、その原型を留めて、純粋に時代と共に言語形態が変化をするに連れて、それぞれの言語に翻訳をされて伝達をされて行く。翻訳は、時に率直な訳文を用いたり、時には抒情や感傷を持たせて増えて行き、分析や解析や研究をされて、後世に遺されて行き、その道を細分化して行く。

 ある星雲では、それは愛情ある物語として残っている。『 神 』の1人の王子が、地獄での悪魔との闘いに赴き、傷を負い、その星雲の何処かの惑星で傷を癒して、その星雲で恋人を創り、『 天界∞ 』に帰って行ったというものであった。

 『 天界∞ 』の住人の来訪は、時としてある一定の規則性を持っていた。それは、その土地で芽生えた文化との柔和である。
 どんなに『 天界∞ 』からの来訪者が、星系に訪れても、文化と民族が繋がって行かないと、その言い伝えとしての伝説は残されて行かない。
 同じ惑星でも、生態系や環境の変化で、文明が滅んだり、また産まれたりしている。それが、惑星の環境変化と共に滅んだりした後で、地層や海底から、その痕跡が化石として発掘される事も多い。

 遥か太古の伝説は、そこかしこに逸話として残されている。これは、純粋なものから広がって行き、新鮮な物を加えて信仰の変化を遂げている。
 地球について言えば、人類の歴史は文化としては6,000年くらいであり、確実な文字の発生と重なる点も多い。伝聞や読み書き、新しい発見として教育として『 神 』の物語が受け継がれている。これらは、『 神々 』の物語の一片である。

 聖霧銀河星雲群には、先のその星雲で妻を娶り『 天界∞ 』に帰って行った『 神 』の王子の伝説が残されていた。その星雲は栄光で栄えていて、世々に文化圏を拡張して拡大をして行き、それとともに『 神 』の王子の英雄譚も遺されていた。
 その王子は、星雲では英雄王であり、また、星雲に住む住人達にとっては『 天界∞ 』の遥か高みに居る存在であった。その名前は、『 バトリス 』とも、『 バトーウス 』とも、あらゆる類似した発音言語で遺されていた。

 聖霧銀河星雲群に、サターンからの使者が訪れた。遥か遠く離れた銀河団の大王からであった。その大王の使者は不遜であり、傲慢であった。
「 聖霧銀河星雲群の大王にして、かの英雄王バトリス殿と親交のあるシャインドストレイトエル殿。 大宇宙∞ の大王サターン配下に加わる事を勧める。返答や如何に 」
サターンからの使者は14名。何れも暗黒魔術の達人である。シャインドストレイトエル大王は、長男であり息子のシャインドストレイトエルⅡ世と2人で、大宮殿の中で14名に囲まれていた。

 大王は玉座に鎮座している。大王はその言葉を聞いて、ほくそ笑んでいる。大王の玉座の後ろの天空まで届く様な高い壁には、『 神 』の王子『 バトリス 』の彫刻が施されている。
その彫刻は巨大であり、金色の円の中に、『 バトリス 』と聖女が向かい合っている彫刻である。2名が動かないでいると、サターンからの使者14名は、暗黒魔術を唱え始めた。
 一気に、14名は大王の玉座に詰め寄って来た。大王を討ち取ろうとしたのだった。その玉座の前に大王の息子シャインドストレイトエルⅡ世が立ちはだかると、14名のサターンの使者達は、四方八方からⅡ世に暗黒魔術を掛けてきた。Ⅱ世は、光の剣を鞘から抜くと、光の尾を引く軌跡で14名全てのサターンの使者を一撃で切り捨てた。

 大王シャインドストレイトエルがⅡ世に礼を言うと、大王の側近達が巨大な宮殿の中に、果てが無い程に、片膝を突いて跪いていた。大王は、その階段の高みの玉座から甲高い声で皆に伝えた。
「 我が領土に住み賜う民に伝えよ。『 神 』の王子『 バトリス 』と聖女の伝説が真実に起きた。予言は本当であった。これから、サターンの軍勢が我が領土である聖霧銀河星雲群になだれ込んでくるであろう。
 武官達は、守りを固めて頂こう。文官達は、近隣の銀河団や銀河群へと使いにでてくれ。友人であり『 神 』の王子である英雄王『 バトリス 』殿が、必ず迎えに来てくれる 」
 大王シャインドストレイトエルはそう言うと、玉座に再び深く腰を掛けて、天空を見上げた。

第3章『 傲慢 』

 ある惑星上での出来事である。その惑星は純粋な発展を遂げている最中であった。時は、科学技術の未発達であるがこれから発展を遂げようとしている。
 諸侯の群雄割拠の戦乱のさなかであった時代は過ぎて、『 神 』への信仰が根付き、惑星全体の国々が纏まりだした時代である。

 『 神 』の第6王子『 ギルシト 』の起こした奇跡が信仰と成り、ある地域が神の王子への尊敬と敬愛で満ちていた。気候は長閑であり、日は柔らかく照り、皆が農耕や商業や産業の発展で、平和的に暮らしていた。
 その惑星のある時代のひとこまの出来事である。突然、その地域一帯に、他民族が雪崩れ込んで来たのである。その旗印は黒一色で、口々にサターンを称える言葉を口にしていた。
 大陸の中央に位置をしていた神聖な王国があった。旗印は、白色の中央に複雑な文様の施しているもので、その文様の横には古の言い伝えられている『 神 』の王子『 ギルシト 』の絵が載せられていた。

 その地方の諸侯達の国々は、地域的に発達していたが、未だ弓矢や剣盾の時代である。相手が不可思議な暗黒魔術を使い、次々に人々に傷を負わせて行くのに対して、諸侯達の兵は、馬の様な動物に人が乗り、ランスや剣盾での攻撃や防御をする戦い方で応戦をした。
 諸侯達は一同に会して、相手の不可思議な「 術 」が何かを討議して、その暗黒魔術を使用する時に多民族が唱える「 サターン 」と言う言葉を忌み嫌った。
 白銀の騎士の集団がその中にいた。その兵は10,000騎であり、指揮を執っているのは古の伝説が残っている国の国王の第1王子であった。国々の旗印は多岐に渡り、複雑な豪華絢爛なものからシンプルな色のものまでである。
 しかし、この惑星は地球とは酷似していなく、その大陸の大きさは遥か地平線に馬を走らせても永久に果てが見えない程である。

 多民族の侵入は猛威を振るい、暗黒魔術でその大地は汚れて行った。しかし、決して穢れないものがあった。それは、純粋な人々の魂である。
 夜になると、他民族は暗黒魔術により奇襲攻撃を仕掛けて来るので、人々は『 いにしえの『 神 』の王子が光を放つ杖をかざし、天使達が乱舞する 』紋様の入った盾を暗黒魔術に対してかざした。すると、暗黒魔術は効力を失い、月明かりの下、侵入してくる多民族の術者達が見え、それを白銀の騎士達は退けた。

 戦乱が1年は経とうとした時、戦闘をしている者達の心に不思議な『 神託 』が起こった。
寝ている時に、『 夢 』で偉大な何者かが、ゆっくりと語りかけて来る。『 夢 』は光輝の中、『 天界 』の天使達を纏った、鎧姿の王冠を冠った『 神 』の『 王子 』の第1王子と名乗る青年が小高い丘の上にいて、天使達が彼に膝まづくものが殆どである。その噂は諸侯の中にまで届き、その青年の夢を見た者に、その夢の絵を描かせるものも居た。

 その戦乱の中のある日、大陸の戦乱で陽が陰る頃、夕闇が静けさの中で、白銀の騎士達が他の騎士達の部隊と防衛線を構えて、奇襲攻撃に備えていた時、この惑星の月に当たる衛星の満月が暗闇の大地を薄暗く照らしていた。
  暗黒魔術を唱える詠唱の声が、遠くの大地の森林の中や泥水の中から聞こえてきた矢先に、空が何故か白み出した。例により、白銀の騎士達が、方形の盾を左手に構えて術者達の突撃に備えていると、白み出した空に、多くの黄金に輝く天使達の飛ぶ姿が見えた。
 同時に白色に光輝く何者かが、天空の夜空に球体と成ってゆっくりと地上に降りてきて、地上の丘に到達した。

 よく見ると、光の青年であり、皆の胸がトキめいた。白銀の騎士達を指揮していた者が、直ぐに数十騎の騎士を伴ってその青年の下に行こうと丘のなだらかな斜面を馬の様な動物に乗り走らせた。
 光の青年の上には天使達が乱舞している。白銀の騎士の第1王子が、青年の近くまで辿り着き、動物から降りると他の騎士達もそれに習った。
 光の青年は、白色に金色の文様を施している輝く鎧甲冑に身を包んでいて、冠を頭に被っている。白銀の騎士の第1王子が、地に片膝を突いて尋ねた。
「 あなたは、『 ギルシト様 』でありますか? 」
 光の青年は、その右手を白銀の騎士の第1王子に差し出し、答えた。
「 私は、『 神 』の王子『 ギルシト 』の第1王子であり、『 天界∞の王族 』です。あなたは、かの領主殿の末裔でありますか? 全て知り得ております 」
 白銀の騎士の第1王子は、それを聞き、目を潤めた。待ちかねた瞬間が今、目の前に存在をしていた。

 天空には一際、大きな大天使達が乱舞していて、円形に似た複雑な飛び方で舞い降りてきて、地上1キロメートルから5キロメートル程の上空で、光の矢を、暗黒魔術を唱える悪魔達に向けて際限なく放ち出し、閃光が夜中の暗闇の中を迸った。天空は天使達の乱舞でまるで昼間の様に明るく、暗い地上とのコントラストで、空と地上の境界を際立たせていた。

 程なくして、天空の光が最高潮に達した瞬間。4大大天使の1人、ミカエルが金色の金紛の光輪をあちらこちらに放ちながら、出現をした。
 地上に居合わせた騎士達が、口々に、こう言った。
『 あれが『 大天使ミカエル 』か 』
 皆の頭の中に大天使ミカエルの思念と圧力が加わってきた。彼女の思念は、「 平和を 」と語り掛けている。
 サターンの術者達の脳には、疑念、混乱、後悔、苦痛、苦悩、敗北、等、複雑な気持ちが沸き起こり、術者達の身が朽ちて行くのを皆が見ていた。

 長い時間が経ち、朝日が昇る頃には、光る青年と天使達は全て消えていて、残された大地には他民族の兵は無く、騎士達の胸には『 平和 』が訪れた胸の高まりと鼓動だけが感じられていた。

第4章『 疑心 』

 大宇宙∞ が平和から戦乱のさなかに入っていると、銀河団・銀河群の多くは『 神 』の栄光に従い、しかし、多数の銀河団・銀河群がサターンの誘惑に乗った。
 大宇宙∞ のそこかしこで、戦闘が繰り広げられる中、唯一、暗闇の神『 ゼウス 』だけは沈黙を保ち、一切としてその領土を侵すものはおらず、どちらに加担をする事も無かった。

 『 天界∞ 』では、その行動に疑心を持つ、『 神 』の第1王子である大宰相がいた。『 神 』の第1王子は第2王子と話し合い、『 ゼウス 』がサターンに加担しているか否かを問う使者を送る事にした。
「 使者として、誰を送るべきか? 」
 2人の王子が思案をしていると、その場に居合わせた大天使長達の1人から、
「 その任は、天界∞ に今、残っている王子の子達の中の者から2名を向かわせる事が最善の策です 」
という声が上がった。
 『 神 』の第1王子と第2王子が「 それは名案である 」と考えていると、『 神 』の第5王子スペーシタイムと第6王子ギルシトの2人が、「 では、私達の第1王子達をそれぞれ使者に送りましょう 」と提案してきた。

 その案に従って、スペーシタイムとギルシトのそれぞれの第1王子の住む『 天界∞ 』にある2つの宮殿に使いを出した。
 スペーシタイムの第1王子が執務している宮殿は『 天界∞ 』の最上層の真ん中にあり、その宮殿は大きく簡素だが装飾は光の『 天界∞ 』の採光を乱反射するように色の工夫がなされていた。
 ギルシトの第1王子が執務している宮殿は、同じく『 天界∞ 』の最上層の所にあり、質素だがやはり素晴らしい大理石の様な石造りの大きなものであった。
 使者が宮殿に入って行くと、スペーシタイムの第1王子スペーシトスは執務にあたっていたが、ギルシトの第1王子ギルーシトスは不在であり、大天使長ミカエルの知人であり親友の大天使長達が、その不在を告げて、ギルーシトスは『 大宇宙∞ 』に大天使長ミカエルを伴い遠征中であると言った。しかし、間もなく帰還するとの事である。
 使いの使者が、スペーシトスとギルーシトスに直ぐに、『 神 』の第1王子の大宮殿に来るように言付けると、『 神 』の第1王子の大宮殿には、もう2人は居合わせていた。

 片膝を突き跪く2名に、『 神 』の第1王子は申し下した。
「 2人には、『 ゼウス 』の元に行き、真意を確かめてきて頂きたい。意図は理解しておられると思う 」
 それを聞くと、2人は右手を左胸に充て、頷いた。

 暗闇は漆黒の様に深く、その目の前をも視界を奪う。スペーシトスとギルーシトスは、自らが放つ光の輝きで、暗闇の中を進んでいた。2王子は、『 ゼウス 』に思念を送っていた、「 話しがある 」と。
 暫くすると、暗闇が一番濃くなった所で、『 ゼウス 』の感覚に2王子が触れた。それは静かな静寂であった。
 「 『 天界∞ 』 の光の子供達か? 何をしにきた? 」
『 ゼウス 』は問いかけた。
 「 『 ゼウス 』殿。よもやサターンに加担する積りではありますまいか? 」
2王子は少し離れた距離から言い放ち、戦いもやむ無しという態度である。暫くの沈黙があり、そして『 ゼウス 』の低い声での笑う声が聞こえてきた。
 2王子は、一瞬にして光輝を膨らませ、光を増幅させて、右手を柄に納まっている剣に当てた。『 ゼウス 』の笑い声は、更に大きくなった。

 『 ゼウス 』は勇猛果敢な2王子に対して、敬意を払う様に、黒い球状に近い円盤を幾つも2王子の周りを回転させて、2王子を苛立たせた。
そうして、それが終わると、2王子は『 大宇宙∞ 』の空間の中にいた。2名の手元には1つの宝箱があり、それを『 天界∞ 』に持って帰るとよいという『 ゼウス 』の思念が残っていた。
それは『 ゼウス 』から『 天界∞ 』に贈られた『 友好の宝箱 』であった。

第5章『 地窮 』

 ある惑星が存在していた。『 多次元大宇宙∞ 』の中の、小さな138億年の歴史を持つ宇宙の中の、ある部分の、ある銀河団の中の、ある銀河の中の、ある9つの惑星を持つ恒星系の惑星であった。
 そこはかつて、美しい海洋、大陸が存在していて、動物達の多様化をしていた惑星であった。しかし、その惑星の繁栄は終わりに近付いていた。

 知的生命と言われる生命が存在している。その定義は定かでない。何故ならば、知的の意味が定義出来ていないからだ。ファッションなのか、インテリジェンスなのか、魅せ掛けのスタイルなのか、スポーツ的な肉体の戦いでの勝利なのか、お金なるモノを集めて惑星資源を買い集めて独占する事なのか、科学技術の粋を集めた大宇宙的な天体観測なのか、身体を鍛え上げて200キログラムのバーベルを持ち上げる事を競う事なのか、数学で誤差のある近似値を求めてほぼ近い数値を言い当てる事なのか、武器を持って相手を威嚇する事なのか、より多数派工作を図り我等無敵なりと1億人くらいの大集団を築き上げることなのか、はたまた、権力者なる者が台頭して全て我の物なりと欲にまみれて富と女と財産を所持する事なのか?

 本来の知的生命の定義を、仮に言うならば、『 貧富の差の無い、差別の無い、平等で平和的な、教育の行き届いた、戦争の興らない、暴力による脅迫的概念が無い、基本的な権利と人権が認められた、国家間が対等な、豊かな資源(食料・科学技術産物・移動と行動の自由)を有効活用して、自然環境と調和できる 』を実現できる生き物なのではないか。

 その惑星は「 地窮 」という惑星と呼ばれていて、外見は綺麗に見えても、醜く、汚く、臭く、乱雑で、嘘と傲慢に溢れて、他を見下し、外見を意識し、美的センスに溢れ、科学技術が膨大に発展していて、全てに於いて「 我々は最強なり。宇宙の覇王であり『 神 』と並び立つ 」と考えていた惑星であった。
 その惑星「 地窮 」の傲慢をサターンは狙った。惑星に住む住人達もサターンを畏れ、半数は敬う者もあり、召喚さえしていた。
 ある動物から進化を遂げたその知的生命達の1種族は、『 神 』をそれぞれの信仰の内で定義して、国家間を超えて宗教というモノを築き上げて、その頂点の椅子に座る者達は、自らを『 神 』との関係性を持たせて人々を畏れさせて、金と暴力で他を支配した。
 皆、口々に「 サターンとはやり合わない方が良い 」と口々に言い合い、サターンの存在を「 神の国の元最高位の大天使であり、美しい容姿をした堕天使 」と言い合った。
 サターンは、「 ヘビの様な皮膚をしていて、恐ろしい力を持ち、強大な力を有し、宗教での扱いも特別 」であった。

 ある可愛らしい愛らしい動物から進化した知的生命は、常に外敵からの攻撃に怯えてきて、互いに略奪の歴史を繰り返してきた。他の物を欲しがり、それを略奪すると、また新しい他の物を欲しがって、延々とそれを皆が繰り返していた。
 「 地窮 」の文明は開化して1万年が経っていない。各宗教間での戒律は厳しく、各国の利益追求は利益優先主義で、自国が儲かっていないと腹を立てて、他の国の発展を羨みその他の国の技術・金銭・人を盗む算段を立てては、経済的・軍事的・科学技術的な略奪を繰り返していた。

 「 地窮 」では、何か不便があると、不利な点があると、欠けていると、差別の対象になり、他人の下に置かれた。集団からの迫害である。
 利益と利益がぶつかると、かならず摩擦が生じた。勝者は敗者を弾圧して、地域毎での勝敗の行方もまた興味深く、無益であり、馬鹿馬鹿しいものであった。
 そんな不遜な「 地窮 」をサターンは偶に、知的生命による召喚で訪れて、無関係で罪のない知的生命の、生命の源を吸い尽くしては去って行った。
 惑星の知的生命の魂、精神、心の奥底にある嫉妬・傲慢・性癖・欲望は凄まじく醜く、知的生命間の付き合いもまた、親密に見えては疎遠であり、親友に見えては敵であり、親愛の異性恋人婦人をも一瞬の欲望で裏切る程の軽い愛情であった。

 惑星では困窮は命取りだ。お金が無いと、知的生命としての存在意義、権利が失われるからだ。
 暖かい気候なら未だいい。冷たい寒い気候が訪れると、世界は一変する。木枯らしが吹き、世知辛い、物悲しさが、知的生命を苦しめ悩ませる。金というものに縛られ、知的生命間の関係に束縛され、そして恨み辛みが交錯している。
 惑星では裕福は楽園だ。お金を持っていると、人気者でありスターだ。性質・性格などどうでも良い、お金を持っていると人が集まって来る世界である。「 愛情も大切だけど、お金がないと生活できないから、対象外 」という言葉さえ流行った事がある。

 環境は大切だが、知的生命が生きる上では環境を無視して、利益を優先する事もある。これを「 立派な人格 」と言うのか「 非地窮民 」と言うのかは、知的生命達にどれだけ利益を齎してくれて、個人の欲望を満たしてくれるかで、評価が決まる。
 時として、環境は猛威を振るい、知的生命を打ちのめすが、知的生命は「 環境のせいだから仕方ないか 」との諦めか、もしくは「 環境め、我々の支配下に置いてくれる 」との傲慢が見え隠れする。

 知的生命達は、想いを馳せる。もっと、もっと、世界が広がればいいのに。もっと、もっと、宇宙を支配できればいいのに。もっと、もっと、欲望を満たしてくれるものがあればいいのに。
 それに反して、厳格を重んじるものも居る。これは「 地窮 」の為を思い、将来を案じているからだ。子供達自らが考えて自分達の未来の住処をより心配して清潔に保ち、子供達の為に子孫の為に、環境を繋げようとする者達だ。
 純粋と正義を、彼等の中に垣間見る事が出来る。汚れた、穢れた大人達の社会の中で。

第6章『 参陣 』

 3つの銀河星雲群があった。それぞれの大王は、且つて、ルシフェルの侵略を受けた時に、それぞれの星雲の大王が協力し合い、悪魔達の侵攻を食い止め、撃退をした星雲である。
 それから永きに渡る時間が経過をして、今、3つの銀河星雲群の3大王と成っていて、互いに親交を交わしていた。
 その3銀河星雲群に、何れもサターンからの使者が来て、何れもサターンからの使者を撃退した。3大王達は、それぞれに連携を取り、悪魔達の侵攻を食い止める決意をした。

 聖霧銀河星雲群には、サターンの7将、赤色銀河星雲群にはサターンの4将、輝糸銀河星雲群には、サターンの6将がそれぞれの星雲群を包囲する様に、攻め立てて来た。
 銀河星雲群の3大王達は動じず、簡単にそれらを撃退してから、それぞれ、兵300億騎、兵300億騎、兵500億騎を従えて、銀河星雲群のある場所で再会を果たして、勝利を祝った。
 それぞれの旗印は、銀色を基調とした落ち着いた紋様、赤色を基調とした豪華な紋様、そして黄色を基調とした優しい紋様であった。それぞれの大王旗には、『 神 』の第4王子『 バトリス 』の英雄譚が描かれた絵柄が施されている。

 地獄の門に近いこの銀河星雲群だから、3大王は覚悟を決めていた。
「 サターンが、間もなく本隊で攻めてくるであろう 」
聖霧銀河星雲群の大王セイントウォーリアエルが言った。
 「 口ほどにも無いだろう 」
赤色銀河星雲群の大王ロッソスターズエルが言った。
 「 我々で、ここで食い止めるのみだ 」
輝糸銀河星雲群の大王シャインドストレイトエルが言った。

 そこに、サターンが悪魔2000万体を引き連れて来たとの連絡が入った。それぞれの大王達は、迎撃の準備に入った。
 中央に輝糸銀河星雲群の兵、右に聖霧銀河星雲群の兵、左に赤色銀河星雲群の兵が待機した。それぞれに深い立体的な布陣をして、その中央に大王と精鋭の者達がいた。
 サターンは自ら先頭に立ち、銀河星雲群の兵を散々に蹴散らしていた。悪魔達は、その間隙を縫って兵と乱戦を繰り広げていた。
 中央の輝糸銀河星雲群の大王シャインドストレイトエルの目前に巨大なサターンの巨体が見えて来た。大王シャインドストレイトエルの玉座の横にはⅡ世が立っている。
「 引き付けてから、一太刀、あびせるぞⅡ世 」
大王が正面を見ながら言った。シャインドストレイトエルⅡ世は頷いた。

 サターンはその巨体の輪郭が見えない程、巨大だ。暗黒が2名を包もうとした瞬間、光の門が開いた。
 光の門からは、光の迸りと共に、大天使長達が次々に出てきて、サターンの暗黒のオーラに光の波動の剣を見舞っていった。光の門はどんどんと大きく成り、物凄い数の大天使長達が宇宙空間へと出てきている。
 一際、大きな輝きが宇宙空間に放たれた時、白色黄金色の甲冑と空間と時間を歪める盾と光と炎を迸らせる大きな剣を持った光輝く騎士が現れた。大天使長達は更に加速度を増して、サターンへと突撃をしている。
 「 『 バトリス殿 』か? 」
シャインドストレイトエルは彼の方を見て、複雑な表情で言っていた。Ⅱ世は呆然とそのありさまを眺めていた。

 『 バトリス 』は思念で空間に存在する皆に伝えた。
「 サターン、久しいな 」
暗黒のオーラを放って、大天使長達の攻撃を受けているサターンも思念で空間中に、
「 あのこわっぱが、何の用だ 」
と、伝えて来た。
 光の門から出て来た大天使長達は、次々に悪魔達を討ち取っている。その羽の羽ばたきは、光のオーロラの様に、宇宙空間に虹色の波を広げて行った。
 『 バトリス 』は『 神 』の名を唱えた。するとそれだけで、サターンの暗黒のオーラが縮小をしていくのを、銀河星雲群の兵達は見た。更に彼は言った。
「 始めるか、悪魔の王サターン 」
光の門は開き続けていて、大天使長達はゆうに500万は宇宙空間に出てき続けている。サターンはそれを見て、他の『 神 』の王子が出てきたら不利と見て、瞬間的に暗黒の身体を収縮させて、ブラックホールの様に何処かに消えていなくなった。

 宇宙空間に残ったのは、散らばる銀河星雲群の兵達と、整然と隊列を成す大天使長達500万であった。
 銀河星雲群の3大王が、『 バトリス 』に近付いてきた。そうして深く会釈をすると、忠節の印に3大王が鞘に納まっている剣を宇宙空間に横たえた。
 「 あなたは、かの『 天界∞ 』の英雄王『 バトリス 』様ですね。お待ちしておりました 」
大王セイントウォーリアエルがそう言うと、大王は涙を流していた。『 バトリス 』は、大天使長達の先頭に立つ者に、近くに来る様に促した。先頭の者は、『 バトリス 』の隣まで来ると、甲冑に身を包んでいるその王冠の顔に笑顔を見せた。
「 息子の『 バトーリウス 』だ。聖女である妻は『 天界∞ 』に居る 」
 3大王は、『 バトーリウス 』から労いの手を肩に当てられた。
「 本当だ。聖女様の印象が残っています。今、私達は死を覚悟してサターンに対峙しました。しかし、『 天界∞ 』からのこの様な贈り物があるとは、思いませんでした 」

 『 バトリス 』は恩返しをしに来た事を告げると、暫らく、その星雲に留まる事を告げた。

第7章『 言語 』

 『 天界∞ 』で産まれ、育った若者達は見事な成人に成っていた。皆、正義感に溢れ、厳格で、気さくで、真面目で、ユーモアがあり、素朴で、間違った行いを忌み嫌っていた。
 毎日の行いは『 神 』が見ているから、決して、間違った道を歩んで、道を踏み外してはならないと考えられている。

 「 言語 」とは、発声から始まり、文字として記述されて理解されている決め事である。だから、有限の発声音の中で、どんなに複雑な単語にしても、必ず他言語同士で重なり合う所が殆どであり、また、同一言語でも同じ単語が複数の意味を持ったり、発声音が似ている単語が、全く違う意味を持ったりする。方言も存在する。
 だから、母国語なら未だしも、他国語の人が話す発声を、聞き間違えたりする事は多々ある。

 言語とは、伝達方法の一種であり、古くは、四大文明辺りに由来するのではないか? ここから、分法を持った言語なり、発声音、文字が産まれて、それらが変化して、現在に受け継がれている各国の言語に変化して行ったと考えられる。
 古くは、アフリカ南端で発生したと思われるホモサピエンスが、片言の発声で情報伝達をしながら長い年月を掛けて、大陸を渡り、南アメリカの南端まで辿り着いた。そうして、そこかしこで文明が発生して、元にあった発声音が変化して地域毎の発音言語と成って行った。
 その最古の(文字を伴った)文明が、四大文明であり、そこで開発された文法や文字が、その地域毎で多少変化をして、現代まで言語が進化を遂げていると考えられる。
 言語は多様化をして、より高度で整理された言語に進化を遂げている。

 だから、人間の言語と「 イルカ 」の言語は、発音域も違うし、文法やその伝達方法も異なっているはずである。当然、人間に身近な、「 犬 」「 猫 」「 鳥 」達も、何らかの方法で、共通の集団的な行動の道を進んでいるのではないか?
 よく、「 鳥 」が1,000羽くらいの密集した集団で、一糸乱れない旋回を魅せながら空を飛んでいるのを見掛ける。そこには、「 鳥 」同士の衝突を見掛けない。
 距離の取り方、方向、高度、速度など、何らかの超音波なのか、甲高い高音域の発声なのか、素晴らしい綺麗な集団の飛行を見る事が出来る。

 だから、『 神 』についても同じ事だろう。
 『 神 』を発声する時に、人は一切として寸分違わない発音をしますか? そもそも、『 神 』の存在を知った、もしくは『 神 』という思考を産んだ時の発声言語は、既に失われていると思われます。
 我々が現在、使用している『 神 』の発声言語と文字は、英語では『 God 』ですが、古くはもっと太古の発声言語で呼ばれていたという事です。しかも、その発声の仕方は、地域毎で多少異なります。
 そもそも、少なくとも、人類の歴史は原人を含めて何十万年程度の歴史なので、仮に「 イルカ 」の様な生命が宇宙の何処かの他惑星にいて、それを発見した時に、人類は知的生命発見で、この生命には知性がある、と成る訳です。

 『 神 』に祈るという事は、心の中で心底、創造主である『 神 』に祈るということであると、神父様に言われた事がある。

 私は、学問を学んでいる社会人であり、宗教家ではありません。しかし、科学を信じる傍らで、『 神 』の存在も信じています。
 地球に暮らすには、お金が必要です。生きて行く為に。それは真面目に働いて稼ぎ、家族を養っていくものです。社会貢献の仕方は人それぞれです。他人に優しく生きたり、自分に厳しく生きたり、社会貢献したり、世界の為に尽くしたり。人には、何らかの役割があり、それらが人と人との繋がりで社会を作り、世界を繋げている。
 綺麗事ですが、これが真実なのです。

 「 言語 」は、時に歌として、音楽として、文章として、規則性のあるプログラミングとして、簡略化されて、人々に伝わります。クラシック音楽の旋律を聴いて、その作曲者の顔が浮かびます。
 仮定的に、人類がこれから宇宙を目指して行く時、知的生命に遭遇した瞬間、恐らく、その発声言語は人が聞き取る事が出来る周波数を超えていて、また、独特の発生場所から音が出されて、文法や単語の在り方も人類には不思議に思えるものであると思われる。

 『 神 』は、全てを超越した創造主であることは言うまでも無い。宗教間での理解の仕方は異なっていても、何らかの『 天界 』からの兆候がある。
 それは、人間の人知を超えていて、反対に排除をしようと試みられた事は過去に類を見るが、その排除こそが、人間の傲りであり、傲慢な悪魔の為す事であると言いたい。
 立派な者は立派であり、真面目な者は真面目であり、真実を捻じ曲げてはならないという事です。他人を羨む嫉妬心や猜疑心や、他人のものを盗もうとする行為が悪魔の印なのです。

 『 神 』から与えられた能力は動かず、そして真実の間違っていない信仰の『 神 』の地位も動かない。
 大人数で、真実を捻じ曲げる行為は、悪魔のする事に他ならない。昔の人達が考えていた有限思想こそが、矛盾しています。

第8章『 第7王子 』

 混沌とした古の大地が横たわり、その遥か高みには星空が見えていた頃。『 大宇宙∞ 』を中心に、『 天界∞ 』と地獄が激戦を極めた後で、『 神 』により直接的に大きな魂を与えられた者達が『 天界∞ 』にいる。
 彼等を『 天界∞ 』の古参の『 6王子 』に対して、『 神 』の『 新王子達 』と呼ばれていた。『 6王子 』はその能力の高さから、『 天界∞ 』での尊敬を集めていて、その子達もそれぞれに高い『 神の王族 』としての資質を備えていた。

 純粋な『 天界∞ 』の『 神の王族 』としては『 6王子 』とその子達が存在していたが、特に第4王子『 バトリス 』は『 大宇宙∞ 』から妃を娶り、その第1王子『 バトーリウス 』は『 天界∞ 』と『 大宇宙∞ 』の混血として、不思議なちからも有した。
 大戦の後に『 神 』により直接的に大きな魂を与えられて産み出された『 王子達 』を、『 天界∞ 』では『 天界∞ の新王子達 』と呼び、『 神 』により特殊な能力をそれぞれに付与されていた。
 それは『 神 』により予知されていた、来るこの大戦の為でもあり、『 天界∞ 』の「 恒久的な平和 」の為でもあった。

 光の延々と続く『 天界∞ 』の中でも特に光輝度が高く、天使達の輪郭さえ見えない光の乱反射する密度の中、詰まり『 天界∞ 』の最上層、もしくは中心部に『 神 』の第1王子の宮殿であり大宰相としての執務する空間があった。
 第2王子のいる宮殿では、『 天界∞ 』の市民(天使達)を管轄する執務が行われている。
 そして、最中心部には、『 神 』の座す『 大神殿 』があり、普段は不在だが、『 神 』に神託(指示)を仰ぎたい時には、王子達や上位の天使達がひたすら静かに、永い間その思念を待った。そうすると、彼等の進む道が見えて来るのであった。

 大戦後に、『 神 』により産まれた最初の王子は女であった。彼女は、自らを律し、『 神 』の第7王子『 イリューション 』と名乗った。彼に与えられた能力は、魅力であり、気丈さであり、気品であった。
 『 イリューション 』の身体の線は細いが、その『 神力 』は他を寄せ付けず髄を抜いて高く、視野が広く、指揮能力に長けていた。兄達には、それが不快であり、また一目置く存在である。
 彼の宮殿は、『 天界∞ 』の最上部の果てにあり、そこに近付くだけで天使達は、『 神力 』の圧力を感じる程であった。
 彼の部下には新しい成長した大天使長達が多く、大戦での凱旋を見届けた若い成長した天使達の顔ぶれが多数いた。

 6王子の『 マテリア 』と『 バトリス 』は『 大宇宙∞ 』に出陣をしている。その中で、大宰相の宮殿から使いの大天使長が2名、『 イリューション 』の宮殿に来た。何れも、知った顔の者であった。
 使いの者が言った。
「 第7王子殿にも、出陣の準備をされたいとの大宰相様の指示です 」
『 イリューション 』は玉座に座して、それを聞いていた。こじんまりしている宮殿には、大天使長達が500ばかりいた。
 「 第7王子殿には初陣ですが、足手まといには為らない様に6王子の指示に従って頂きたい 」
もう1名の使いの大天使長が付け加えて言った。
 宮殿に居た500ばかりの大天使長達は、それを聞いて苛立ち、皆、使者に向かい足を1歩踏み出していた。『 イリューション 』はそれを手で制すると、こう言った。
「 兄達は歴戦の強者と聞いています。私は新参者故、幾らばかりの数を連れて出陣をすればよろしいのか? 」
 2名の使者達は、それを聞いて暫く考え込んでいた。『 イリューション 』はそれを見て微笑を口に称えて玉座から立って2名の使者に申した。
 「 では、かの伝説の戦いの『 スペーシタイム 』の兄に習って、50万ばかりの数で宜しいか? 」
 2名の使者は、畏まって第1王子にそう伝えると、宮殿を後にして行った。

 宮殿では、若い大天使長達が、苛立ちを隠せないでいた。第7王子に「 たった、50万では、他の王子達に見劣りする 」と言いたげであった。
「 皆の者に伝えよ、数は関係が無い。私を信頼する50万の大天使長は、付いてこい 」
『 イリューション 』は、そう言い放って、宮殿の広間から自室へと戻って行った。

第9章『 失意 』

 『 スペーシタイム 』と『 ギルシト 』は、第1王子の執政する『 天界∞ 』の中央宮殿で大宰相、第2王子と4人と、神聖4大大天使長4人を交えて、軍議をしていた。大宰相と第2王子だけ、光沢のある白色に金色の文様の入った柔らかな服を着ていて、無装備である。
 他の6名は、それぞれに白を基調とした金色を交えた甲冑に身を包んでいて、頭には王冠を冠している。長方形の石で出来た長い机に対して、装飾の素晴らしい椅子にそれぞれが腰掛けている。

 1名の大天使長が、『 イリューション 』が来訪した事を告げた。空いている席には既に第7王子は据わっていた。王子達は場が華やいだ事を感じ取り、直ぐに彼女であると感じた。
「 目上の王子様達におかれましては、久しぶりです 」
第7王子はぶっきら棒にそう言った。『 天界∞ 』の時間経過は複雑なので、年齢は関係が無い。個々の『 神力 』や『 霊力 』や『 魂の力 』が重要である。
「 弟の王子達は、呼ばれないのですか? 」
続けて、『 イリューション 』が申した。
「 彼等には、『 天界∞ 』の守りを固めて貰う必要性があるので、今回は『 天界∞ 』に残って貰う。『 イリューション 』の力が必要であり、ここに呼んだのだ 」
 第1王子の大宰相が、柔らかい表情でそう言って諭した。

 軍議は、『 神 』の参陣と、既に2名の王子達が『 大宇宙∞ 』に出陣している事、そうして沢山の大天使長達が出払っている事であった。一番重要な事は、どう動くかでは無く、どの様に『 大宇宙∞ 』を『 平和 』に導くかである。
 『 大宇宙∞ 』の反旗を翻した大王達の説得と、それに応じない大王達を宥め『 許す 』事である。そうして、サターンを地獄に追い堕として、地獄での「 決戦 」が待っている事である。

 今回は、第5王子と第6王子と第7王子と4名の神聖4大大天使長達の7部隊編成で行く事と成った。
『 神 』の近衛師団大隊は、第5王子『 スペーシタイム 』が引き連れて『 神 』とともに行き、それに神聖4大大天使長のラファエルとガブリエルが従う事になった。これは『 神 』直々の指示である。
 経験の浅い第7王子は第6王子に帯同して、神聖4大大天使長のミカエル、ウリエルが従う事になった。

 先遣隊として既に2王子が『 大宇宙∞ 』に出ている中、第6王子と第7王子がミカエルとウリエルを伴い、2王子の動きを見て、本隊である『 神 』を援護するというものである。
 第7王子は単独での行動を願い、異を唱えたが、『 ギルシト 』の説得に応じた。

 いよいよ、第6王子と第7王子の出陣の時、第7王子『 イリューション 』の胸が高鳴った。宇宙空間に出ると、暗闇の中、第7王子の身体と魂が寒さと現実感とに触れた。
 『 イリューション 』の周りには、成長して血気盛んな大天使長達が不思議な感覚にとらわれている様であった。それと同時に、遠距離には『 ギルシト 』の気配がして、安心感があった。

 連なる銀河団から、ひっきりなしに使いの者が『 ギルシト 』の元に来ていた。彼は丁寧に大王達からの使いの者達を労い、動かない様に説得をしていた。
 何名かの使者が、『 イリューション 』の元にも来た。それらは暗黒銀河が送り込んできた暗殺者であったが、彼は丁重に応じた。暗殺者達は、『 イリューション 』が『 神 』の第7王子と知り、攻撃を彼に加えようとしたが、一寸たりとも隙が無い。物凄い、圧力を感じていた。
 第7王子の周りの大天使長達も、暗殺者達を見抜いていた。とうとう、暗殺者達は何もしないで帰って行った。

 程なくして、悪魔の12将が悪魔1,000万を連れて遠くに布陣をしてきたのが判った。『 神 』の第6王子『 ギルシト 』は、撃って出ようとする『 イリューション 』を制して、ウリエルに護衛を命じた。
 『 ギルシト 』は偵察の大天使長10,000を、四方に配置してから、悪魔の兵に対して中央が100万、右翼100万、左翼に100万のオーソドックスな立体的な布陣を敷いた。それを『 イリューション 』は50万の大天使長とウリエルとで右舷の遠方から見ていた。
 悪魔達の12将が慎重に『 ギルシト 』の右翼の兵と左翼の兵の前線に当たってきて、閃光と暗黒魔術の黒い渦が飛び交っている。悪魔達は、次第に動かない前線に総がかりで攻撃を仕掛けて来た。右と左の大天使長達は十分持ちこたえていたが、そこに下方からミカエルの部隊、上方から『 ギルーシトス 』の部隊が強襲を仕掛けた。
 それと同時に、一気に右と左の大天使長の部隊を前進させて、悪魔達を壊滅させた。

 遠くから見ていた『 イリューション 』は、それを見て「 手堅いな 」とだけ感じた。そして、「 私ならば、もっと簡単に悪魔を退治できる 」との慢心を心に抱いていた。

 戦いが終わり、数多くの銀河団が解放されると、それらの大王達が自ら、『 ギルシト 』の元を訪れた。皆、口々に彼の功績を称えるものであった。
 その中に、悪意を持つ者が2名混じっているのを『 イリューション 』は見抜いていた。その2名が『 ギルシト 』に賛辞を贈る為に近付いた瞬間、2名の大王は剣を抜き『 ギルシト 』に切りつけようとした。『 イリューション 』は『 神力 』を増幅させて、その2大王を消し飛ばした。
 2大王の姿は無く、宇宙空間には他の疑念を抱く大王や、恐怖を覚える大王達がいた。
 『 ギルシト 』は嘆いた。
「 第7王子。何故、この様な無益な事をした。今、分かり合おうとしていた2名の大王達であったのだ。他の大王達にも、この様な事があれば、『 天界∞ 』に対して疑念が湧く。無益な殺生をしては為らない 」

 その言葉を聞き、頭の良い『 イリューション 』は全てを理解して、自らを恥じた。第7王子は戦列を離れて、遠くの銀河に行き、自らの傲りと稚拙な行いを悔やみ、涙を流した。

第10章『 物質世界 』

 物質世界に身を置いている。銀河の果てに自らの愚かさを知った彼女は迎い、泣き暮れていた。聖なるミカエルが寄り添っていた。
 『 天界∞ 』の世界しか知らなかった『 イリューション 』には、あの銀河団の2大王が本心を隠して、兄『 ギルシト 』に襲い掛かった事実だけを見て彼女の大いなる『 神力 』を2大王にぶつけていったのだ。そうしたら、2大王の姿は無かった。
 彼女は自らのちからが、物質世界でどの様に作用するか、判らなかった。今、彼女の身体は小さく身を窶し、ある惑星の大いなる大地に立って青空の下で、涙を拭っていた。

 大地を泣きながら歩いていると、遠くに城址が見えてきて、白に金色の甲冑に王冠を冠した姿で、森の獣道を通り抜けて、両側が芝の様な綺麗に手入れされた小道を、その城址に向かって歩いて行った。
 城址の周りには石造りの民家が立っていて、迷路の様に、彼女は足を進めた。時々、人の往来があり、そこを通り過ぎると、この町の大通りに出た。
 彼女は涙を拭い乾かし、女性達が小売りする露店を不思議そうに眺めては、物質世界の不思議さを感じていた。

 綺麗な甲冑に王冠を被った彼女の出で立ちは奇妙であり、また気品に満ち、光輝いている。当然、男達の好奇の目に晒された。1人の男性が彼女を誘おうと大きな身体で彼女の右腕を掴んだ。彼女はその腕を振り払い、剣を抜こうとして躊躇った。男は一言何か言って、去って行った。
 露店の女性が、「 大丈夫かい? 」と10名くらい集まってきて、『 イリューション 』を1人の女性の家に連れて行き、食事を振舞ってくれた。食事の味は、彼女にも解った。塩辛く、甘く、酸味が利いていて、苦く、辛い。
 女性達は、彼女の出で立ちと大きな身体と気品に、同性ながら惚れ込んだ。

 夜、ベッドの様な寝床で、甲冑に身を包みながら寝転がっている『 イリューション 』の目は冴え、少し家の外に出てみる事にした。
 外に出ると外気は冷たく、吐く息が白い。どうやら、家の中は女性達が、彼女が寒く無い様にと、暖を交代で取っていてくれたようだ。
「 これが物質世界か? 『 我々の世界とは違うのだな 』 」
彼女はそう思い、天を見上げると、当たり前の様に星空があり、それも星の密度が濃く、それぞれが輝きを放ち瞬いている。
この世界では、誰もが意志を持ち、個人の意思で自由に動いている様に見える。しかし、『 天界∞ 』から見た世界は、『 神 』が全知全能でコントロールしている『 大宇宙∞ 』の中の1コマの出来事である。

 女性の1人が気を遣って、『 イリューション 』を見に来た。手には熱い金属コップに入った飲み物がある。木製の長椅子に2名が座り、話しをし出して永らく経った時に、『 イリューション 』は女性に言った。
 「 私は、この土地の者でも無く、遥か天空の彼方から来たのです 」
それを聞いて女性は答えた。
「 判っています。あなたは『 神 』に関係のある方ですね。大地と大気が、この通り揺れています。ですが、地震では無い事を、私達は判っています 」
 『 イリューション 』は漸く、女性達の優しさと親しみが、敬意である事に気付いた。そうして、彼女の脳裏には、『 ギルシト 』が今、どのようにしているかが、気に成っていた。

 金色の高貴な光と共に、聖なるミカエルと大天使長達20名程が、夜空から舞い降りて来た。夜空を彩っている。
 家の中の女性達が「 驚嘆の声 」を上げていた。
ミカエルは、『 イリューション 』に、物質世界の人々がどの様なものかが理解出来たかと彼女に問いたそうであった。彼女も、『 大宇宙∞ 』の成り立ちの小さな世界を垣間見る事が出来た事を告げていた。

 『 イリューション 』が直ぐに、天空へと飛び立ち、大天使長達が超高速でそれに続くと、1瞬で『 ギルシト 』の元に行き、彼女の部下達の心配を感じていた。
 剣を翳して、『 ギルシト 』に襲い掛かって行った2大王は時間が僅かに戻っていて、平伏してから、『 ギルシト 』と堅い握手を交わしていた。

第11章『 純真 』

 『 天界∞ 』では、『 神 』の具現化を待つ者達がいた。それぞれに、『 神 』の精工で綿密な計算の元、そこの『 王子達 』や市民達(天使達)の兆候があるはずである。
 大宰相の第1王子は、『 大宇宙∞ 』に出陣している『 マテリア 』『 バトリス 』『 ギルシト 』『 イリューション 』と2名の偉大な聖なる大天使長『 ミカエル 』と『 ウリエル 』達から、戦況の報告を受けていて、それにともなう取り纏め役をしていた。
 一時は、大混乱を極めていた『 大宇宙∞ 』も『 天界∞ 』からの出陣の報が、各大天使長達の使いがそれぞれの銀河団・銀河群に到達して、それぞれの大王達に面会をしてからは、サターンに加担する大王達の数は減り、戦況は膠着して、一進一退の攻防を繰り返していた。

 それぞれの銀河団・銀河群の大王達は、『 天界∞ 』からの使者としての大天使長達の姿に、古の太古から伝わる土地毎の伝説を重ね合わせて、「 伝説と逸話 」とが真実であった事を知って喜んだ。

 伝説は、尾ひれが付き、年月と時の経過と共に、変化をして行くものである。『 天界∞ 』からの使者は、黄金色の甲冑に身を包んだ伝説の大天使達であり、その背には不思議な羽が多数生えている。
 それぞれに高位の大天使であり、『 天界∞ 』での地位は大天使長であった。大天使長達は、銀河団・銀河群の大王達に面会をして行く時、命懸けであった。自らの命が無いものと考えての使者である。

 ある大天使長は銀河団・銀河群の大王に歓待を受けてそれを断り、代わりに『 神 』への忠誠を説いて『 天界∞ 』へと帰っていった。
 ある大天使長は、大王に面会をした時に、側近達に襲い掛かられて交戦の末に、命を落とした。
 ある大天使長は、大王と面会をして、説得の為に数十日の間の時間、『 天界∞ 』の理を説いた。

 『 天界∞ 』では、大宰相である第1王子、市民(天使達)を纏め上げる第2王子、そして近衛師団大隊長『 スペーシタイム 』、偉大な聖なる大天使長『 ラファエル 』『 ガブリエル 』、大戦の後に『 神 』によって創造された『 新しい王子 』達、また、それらの子供達である『 神の王族 』である眷属達が、戦況を見守っていた。
 第1王子の子は11名、第2王子の子は22名、『 スペーシタイム 』の子は55名いて、それぞれに『 天界∞ 』の重職に就いていた。
 その子達とは、所謂、王子達が『 魂 』を分け与えた者達であり、子達の『 魂 』の大きさはまちまちであったが、その親に匹敵する程の者も沢山いた。

 王子達の子達は、「 純真 」であり、「 潔白 」であり、「 思慮深い 」が「 血気盛んな側面 」も持ち合わせていて、その未来への可能性は大きいものである。
 『 天界∞ 』に留まる者達もいれば、『 地上界 』へと下向する者もいて、彼等なりの成長を遂げる事を望んでいた。『 天界∞ 』での教育とは、学ぶ事であり、経験をする事であり、正誤を正しく見定める事であり、そうして「 正義 」「 愛 」「 忠節 」「 礼儀 」「 情熱 」「 天命 」を全うする事であった。

 輝かしい光の空間と時間の中、『 天界∞ 』に住む者達の永遠の尊敬は、『 神 』に向けられていた。

第12章『 親愛 』

 3名の大王の領地は、初めは小さな3つの銀河星雲群であった。それが、ある大戦をきっかけに『 平和 』の機運が高まり、周りの小惑星群や銀河を束ねる惑星人達の羨望を集めて、次第に寄り集まってきて大きく成り、それが今の巨大な近接した3つの銀河星雲群となっている。
 それぞれに、特徴的な多星人の集団を作って、聖霧銀河星雲群、赤色銀河星雲群、輝糸銀河星雲群と呼ばれていた。

 今、ここに500万の大天使長達と、『 バトリス 』とその子息が寄港していた。サターンを退けた伝説の英雄王が数十億年ぶりと思える時間の経過の果てに、新しい伝説を伴って帰って来た。それが、銀河星雲群には嬉しく、信じられないものであった。
 『 バトリス 』は3大王と、その子息達と永い昔話しをしていた。それは、「 地獄でのサターンとの対決から始まり、傷付き、この星雲群に避難し、聖女に介抱して貰い、妻に娶り、『 天界∞ 』へと帰って行くまでの話し 」であった。
 3大王の若き子息達は、その話を聞いて興奮をしていたり、目を見開き『 伝説 』との共通点と違いを確かめていた。
その中には、勇猛果敢な青年も居れば、落ち着いた壮年の者も居る。

 軍議の席には、食事が運ばれて来た。大王シャインドストレイトエルの血縁の信頼できる聖女達が拵えた、独特の料理である。その中には、大王の子女も混ざっていた。
 聖女達は、それぞれに先ず、客人である『 バトリス 』と子息『 バトーリウス 』の元に食事を運び、次に他の者達が、3大王とその子息達へと食事を運んだ。食事は、星雲群の特産物であるが、奇妙なものである。

 『 バトーリウス 』の元に食事を運んだ者は、大王シャインドストレイトエルの末の子女であり、素晴らしい美貌のものであった。美的感覚から言うと、その容姿は銀河一番と言われる程の者である。
 当然として、『 バトーリウス 』は恋に落ちた。
 『 バトリス 』と大王シャインドストレイトエルの2名が気を遣い、2名に席を外して善いとの合図を送った。
 ここは大王シャインドストレイトエルの銀河星雲群の領内にある大きな宮殿である。『 バトーリウス 』と聖女は、彼のエスコートで軍議の部屋を出て宮殿の1階の大理石でできた大広間に居た。周りには人気は無い。
 彼が聖女の名を聞くと、聖女はポツリと彼を見上げて名を名乗った。その名は『 光の中の大地に打ち寄せる波の旋律 』という意味を持つ輝糸銀河星雲群の共通語である複雑な発音で述べられた。

 『 バトーリウス 』はその長い発音を1度聞いただけで記憶して、聖女との話しを進めた。彼は、『 天界∞ 』の話しはせずに、自分の事を中心に話した。ステータスでは無く、彼を理解して貰いたかったからだ。
 今度は、彼が聖女の生い立ちを聴いていると、聖女は奥ゆかしく自らを誇ることなく、星雲群での成長と土地の話しをしてくれた。

 そこに、『 バトリス 』からの使いの者が来て、『 バトリス 』は400万の大天使長達と先へと進むことを告げられて、『 バトーリウス 』はここに留まる様に申し伝えられた。
 『 バトーリウス 』は不服があったが、彼は素直にそれに従った。

 『 バトリス 』の大天使長達が、3つの銀河星雲群を出立した事を、遠くの宇宙空間から悪魔の10将が見届けると、密かに悪魔達は3つの銀河星雲群を急襲する準備を進めていた。

第13章『 宝箱 』

 『 天界∞ 』では、スペーシトスが『 ゼウス 』から貰って来た宝箱を、光の神殿の祭壇に保管をしていた。それには、厳重に何重もの光のスクエアで、宝箱を囲っていた。

 光の神殿は、天界の最上層の中層に存在していて、『 神々 』の生命の光の源である霊的な場所であった。そこでは、光の雨、又は雪の様な光球が降り注いでいる。本来ならば高速で見る事が出来ない光の速度に時間的制約があり、時間的流速がスローモーションの様に抑えられていて、光の粒子が雪の結晶の様にそこ彼処から降り注いで来る地帯である。

この光の神殿の付近では、どの様な暗闇の粒子が存在していても打ち消されて、降り注ぐ光球に覆い尽くされてしまうのである。

 

 その光の神殿に置かれた『 宝箱 』の周りは、それでも暗闇の湯気のようなものが立ち上っている。その霞の暗闇は直ぐに光の光球によって打ち消されるように包み込まれて、光の神殿は一切として、その眩しい光の積光を止めようとしなかった。

宝箱には邪悪な思念は一切として感じられずに、その幾重にも囲われた光のスクエアの中に、暗黒の霧を薄っすらと立ち込めさせるのみである。

 

 スペーシトスは、『 スペーシタイム 』にその宝箱の対処の相談を持ち掛けた。余り、永くそのまま光の神殿に置いて置く事はできないからである。

 或る日、2人で光の神殿を訪れる機会があった。その折、光のスクエアの中に入った宝箱の近くにスペーシトスと『 スペーシタイム 』が差し掛かると、『 スペーシタイム 』はある異変に気が付いた。

 光のスクエアの中で、光の粒子である光球と、暗闇の粒子が反発をし合い、そして暗闇の粒子が光の粒子と結合をして、透明なごく微小な粒子と成っている。スクエアの中の光の結晶と暗闇の結晶が結合をして、透明な何かが産まれているようだった。

 彼はその異変に気付くと、真っ先に第1王子に知らせた。

 

 暫くして、光の神殿を取り囲む大天使長と中で光のスクエアを囲む、王子達がいた。彼等は厳重に光の障壁で宝箱と王子達を囲い、暗闇の霧を出している宝箱を開けた。

 宝箱を開けた隙間から光球が物凄い量で流れ込み、宝箱の中の暗闇を光で満たして行った。そうして、宝箱の蓋を開け切ると、そこには『 光と暗闇の混在した、果てしない空間 』が横たわっていた。

 強烈な引力が宝箱から働いている。王子達は、その宝箱の蓋を閉じて、鍵を掛けた。すると透明な粒子の結晶がそこかしこに飛散をしていた。

 王子達が大天使長達にそれらを拾い集める様に指示して、集まった透明な結晶は最も内側のスクエア一杯に満たされる量であった。「 これは何だ 」と皆で話していると、突然に彼等の思念の中に『 神 』の言葉が与えられた。

 

 「 それは光と暗闇の結晶であり、新しい創造物であり、新しい元素と呼べる存在である。 それを持って、1体の王子を形造ると、魂がその王子に宿る事であろう。産まれた王子は、『 比類なき神の王子 』として、その『 神力 』『 力 』『 魂 』『 知力 』『 生命力 』『 精神力 』を誇り、その栄光は『 天界∞ 』随一と称されるであろう 」

 

 王子達は急いでその透明な結晶を集めて王子の形造り、何が起こるのかを待った。透明な結晶で出来た王子は『 神 』から直接、原色のあらゆる色の光の魂を与えられて、動く王子と成って生まれ変わった。

 『 神 』はその『 比類なき神の王子 』に7王子と神聖4大天使長の文字を充てて、『 アストシラブミイゥエス 』と名付けた。

 『 アストシラブミイゥエス 』は男性の王子であり、その『 神力 』の大きさは途轍も無く大きく圧力を感じ、忍耐強く、忠誠は天の如く高く、思慮深い事は深海の如くであり、優しい事この上無く、愛の深い事は果てが無かった。

 『 神 』はこの王子をこよなく愛し、単純なあだ名で全てを持つ初めの王子として、『 ファーストオール 』という名を授けた。この者は謙虚であり、厳格であり、また無限の優しさを兼ね備えていた。1つの欠点を上げると、その優しさ故に、何でも許してしまう事であった。

 

 光と暗闇の上には、混沌がある。混沌は存在の不確かさであり、光は生命の魂の根源、暗闇は生命の魂の安らぎとすると、光と暗闇を合わせて、地獄を除いた全ての存在するモノの創造主である『 神 』が『 天界∞ 』の最も最上の位置、もしくは最も中心部におられた。

 

注)この話しはSF(スペースファンタジー)であり、物語として呼んで下さい。

第14章『 天命 』

 『 天界∞ 』でのある出来事は、『 神 』が為した調べである。

 

 光と暗闇は対であり、暗闇は地獄とは異なる。何故ならば、暗闇の中でも人は歩き、働き、眠るからです。暗闇は確かに、人の心理的に昼間の近い恒星の光が暖かく届く時間帯と異なり、生命に恐怖心を与えるものです。

 しかし、これから人は、その暗闇の宇宙空間に挑んで行かないと為らない。暗闇に光が無いという事実は、否定されるものです。例えば、宇宙空間は果てしなく恒星以外は暗いのですが、仮に太陽に向かい暗がりを近付いて行くとすると、その高熱は計り知れなく熱いのです。反射をする物質があってこその、光子の存在の証であり、太陽に近付いて行く時の高熱は光の源である光子エネルギーと、反応エネルギーに由来しています。

 

 だから、人類が知らずに水星の周回上くらいの暗闇の空間を目指したとして、太陽の引力で宇宙船が落ちないとした時、宇宙船は多量の光子エネルギーで燃え尽きるでしょう。

 勿論、太陽は小さな恒星の1つであり、全てのモノの創造主『 神 』ではありません。最低条件でも、我々の存在している『 138億年の歴史を持つ大宇宙の物質量と空間と時間 』は創造を成されているからです。

 

 『 ファーストオール 』は、『 神 』の第8王子に位置付けられた。光と暗闇の混血だが、潔白であり、光輝く『 天界∞ 』でもその存在感は、群を抜いていた。

 いよいよ、『 神 』の具現化が始まろうとしていた。『 天界∞ 』の最上層部で、光の乱反射が大神殿で起こり始めていた。天使達は、その眩しい光の乱反射を見ながら、それぞれに祈りを捧げていた。

 四方八方から光の粒子が大神殿に集まって来て、それが延々と続くかに見えたその時、『 天界∞ 』の最上層部または最中心部にある大神殿の『 神の王座 』に、具現化した『 神の姿をした者 』が座っていた。

 

 その瞬間を狙って、サターンの6将が、『 天界∞ 』の扉をこじ開けてきて瞬間移動をしてきて、具現化した『 神 』へと攻撃をしかけてきたが、『 神 』はその全てを無効化した。そうして、サターンの6将は、その原型を留めずに身体の存在を無くして生命を失った。

 

 『 スペーシタイム 』と『 ファーストオール 』は1対であり、また『 神 』の周りを護衛する近衛師団大隊長でもあった。

「 皆の者。これから『 神 』は、我々を伴って地獄に向けてサターンを追い落としに向かわれる。その途中、幾ばかりか、障害が我々に立ちはだかってくるであろう。悪魔達は、あらゆる姿に形を変えて、その生き残りを図る。『 神 』に対して、『 神 』の代理を名乗り、暗殺をも理不尽に仕掛けてくると考えられる。『 天界∞ 』の者達は決して悪魔の詭弁に騙される事無く、正義を全うされる事 」

『 スペーシタイム 』がその様に、『 天界∞ 』の全てに伝わる様に、思念を送った。

 『 天界∞ 』の全てが、その思念に答えて共鳴して、光を発して答えた。

 

「 悪魔達は、『 天界∞ 』に対して簒奪を企んで、その能力を欲する事であろう。しかし、それを為した者達には、未来永劫として、光は降り注がない事を教えて行くのみである。 『 神 』の能力の簒奪を試みた銀河団・銀河群、惑星に対しては、その者達と『 天界∞天国∞大宇宙∞ 』との隔絶を持って答えるのみである 」

『 スペーシタイム 』が更に付け加えて思念を送った。『 天界∞ 』中の全てが、それに答えて応じた。

 

 『 天界∞ 』は、永遠の光の輝きと煌めきと閃光を持って、その無限の天空の彼方に存在をしていた。

第15章『 銀河団 』

 『 ギルシト 』の元に戻った『 イリューション 』は、彼から3銀河団の応援に向かう事を頼まれた。
 『 大宇宙∞ 』の天頂銀河団から見て、3銀河星雲群のある丁度、反対側である。そちらの平定に向かう事を第7王子『 イリューション 』は告げられ、50万の大天使長達と向かうことと成った。

 3銀河団のある反対側の宇宙空間には、沢山の銀河団・銀河群が点在して、ボイドを除いてあわ構造を形成していた。護衛には『 ウリエル 』が付く事と成っていた。
 第7王子はその巨大な『 神力 』で空間と時間を捻じ曲げると、その歪みに皆が入り込み、一糸乱れず、一気に反対側の宇宙空間へと出た。
 反対側の宇宙空間の銀河団・銀河群の塊に彼等が出ると、そこは激戦区であった。『 神 』側の銀河団・銀河群に対して、サターン側の銀河団・銀河群が攻撃を仕掛けていた。

 『 イリューション 』は、空間上に座標を表示して、側近の大天使長の者達に、応援を求めて来ている、銀河団・銀河群に遣いの者達を出した。そして、『 イリューション 』の本体50万は、純紫銀河団へと入って行った。
 丁度、純紫銀河団では、所々で戦闘が繰り広げられていた。純紫銀河団の大王の息子にしてその第3王子ヴァイレットピューアエル4世の兵が悪魔達と交戦をしている所に出くわした。
 大天使長の1名が、その中でも一際、閃光を放って悪魔達を屠っている4世を目に留め、尋ねた。
「 大王殿は、何処か? 『 天界∞ 』から『 神 』の第7王子にして偉大なる賢王『 イリューション 』の寄陣である。直ぐに、目通りをされたい 」
 4世は、光の剣を休め鞘に納めると、申した。
「 聞かぬ名だが、あの一際光輝いている貴嬢のことか? 」
 大天使長達は、一瞬、失礼だと言いたそうにしていたが、その通りだと言った。4世は、『 イリューション 』の人となりを見た。確かに、『 天界∞ 』の者である。

 4世は、側近の者達と呼応して、悪魔達に一斉に聖なる光球を見舞い、申した。
「 では、付いて来られよ。父であり、純紫銀河団の大王ヴァイレットピューアエルに逢わせて致そう 」
 4世は一気に兵を引くと、銀河団の中心にある母星へと、『 イリューション 』達を案内して行った。紫色のその惑星は、不思議な光輪で囲われていて、4世と『 イリューション 』達はそれを通過して、聖なる者達である事を証明した。
 惑星にある大宮殿は高さが低く、面積が広かった。『 イリューション 』は数名の大天使長達を伴って、大王のいる大広間まで入って行った。

 大王ヴァイレットピューアエルは、階上の豪華絢爛な玉座に座していた。階上から近くに歩いてくる『 イリューション 』を見下ろしていた大王は、その『 神力 』の圧力を感じて、階下まで降りてきて『 イリューション 』を迎えた。
 「 貴女は、『 神 』の御子女様であらせられますか? 」
大王は申した。第7王子はその通りであると言い、援軍に来た事を申し下した。大王の側近たちは、彼の『 神力 』の圧力で、床に叩きつけられそうである。
 「 早速だが、悪魔どもと一戦をしたいが、宜しいか? 」
『 イリューション 』は言った。大王は、彼の手並みを拝見したいとの思いで、それを快く快諾して、今、攻め立てられている銀河団領の場所を敢えて教えた。
 「 では、『 ウリエル 』と10,000ばかりの大天使長は付いて来い 」
彼はそう言って瞬間的に戦地に赴いた。

 ある1つの、大王の銀河団の中の銀河に攻め立てている悪魔達は100万ばかりであった。『 ウリエル 』が戦線の先頭で光の剛剣を振るいながら、聖なる巨大な光球を悪魔達の中心部分に見舞っていた。
 慌てる悪魔達に、若い大天使長達が掛かって行く。
『 イリューション 』は『 神力 』を集中して、100万の悪魔達に、聖なる雷を見舞うと、戦いは終わっていた。
 直ぐに、紫色の惑星の大宮殿に第7王子が戻ってくると、大王は、片膝を突き『 イリューション 』を迎えて、その聖なるちからを称えた。

 黄緑銀河団と、黒目銀河団から遣いの者達が来て、悪魔達が全て撤退をして行った事を報告して、戻って行くと、大王は大宮殿の近くにある大神殿に彼を案内して行き、その神殿に彼の名前を刻んだ。

第16章『 無限 』

 『 宇宙 』を表現する時に、その全てを現わす時と、漠然とした宇宙空間を現わす時がある。
 その全てという『 全宇宙 』という表現を使うと、何かで囲まれている限界のある限定された空間内に存在している「 物質量と空間 」の様に思われてしまう。この時、やはり『 宇宙 』は膨大なものであるが、有限なものなのかというこじんまりした絶望を覚える。
 漠然とした宇宙空間を現わす時は、何か先にもっと未知のものが存在していそうな印象を受けるが、狭い特定の宇宙空間という印象だ。

 「 無限遠 」という考え方が数学にあります。物質同士が互いに、万有引力で引き寄せ合う時に、「 無限遠 」という引力を互いに作用されない程の遠くという意味です。
 ビッグバンでよく言われる事です。その後の10億年間は、水素かヘリウムの霧で宇宙が曇っていた、もしくは水素原子なり分子が宇宙空間に万遍なく分散していたという考えです。これで、約10億年間の間に、水素が引力で集まり次第に大きくなりそれらが衝突して、大きな銀河を形成して行ったと言われています。
 この理論にも矛盾は多少あるのです。ある1点からの膨張だと、時間的に光の何兆倍の速さで物質が膨張と飛散をしないと、『 全宇宙 』が水素の霧で満たされないからです。
 だからこそ、その矛盾を埋める思想として、『 神 』による『 全宇宙 』の創造が考えられます。

 例えば、宇宙空間でのある「 距離 」と2物質の「 質量 」での「 無限遠 」との関係性が考えられます。宇宙空間には、他にも「 素粒子 」で満たされている部分があるからです。
 これは、いくら「 無限遠 」でも、2物質の「 質量数 」が大きすぎると互いに干渉をしあうのではないかというものです。例えば、十分に遠い2物質間の距離が100光年あったとしても、大きな銀河同士は互いに引力で引き寄せ合うということです。
 それに対して、100光年離れた、2つの水素分子同士は質量数が小さすぎて互いに「 干渉 」をし合わないというものです。

 実際に、恒星や銀河の成れの果て、詰まりその中心部には大きなブラックホールがあると言われていたり、恒星の成れの果てもブラックホールに確率がかなりあります。
 これは、光さえも吸い込んでしまうものです。ここでも、「 無限遠 」というモノが関係をしていて、現在の理論を説明するまでもないですが、恒星を公転する惑星があった場合、恒星の膨張(光子の損失以外は重心質量は変わらないとする)による、どちらかというと公転周期が「 無限遠 」に向かい広がるか、近いものは恒星に落ちるということです。

 だから、「 全宇宙 」という考えでは、現在は膨張をしている(速度を持っている)と言われていますが、地球での測定の度にその「 全宇宙 」の年齢が132億年から134億年と訂正されて、現在は138億年と言われています。つまりこれは『 有限 』の訂正を繰り返しているのです。
『 無限 』というモノを考えると、初めから際限がないものであり、訂正をする必要もありません。仮に、宇宙が2つあると仮定すると、その2つの『 宇宙 』同士は、「 無限遠 」の距離にあった場合に、互いに干渉をせずに『 宇宙 』が存在している可能性もあります。それを、『 多次元大宇宙 』とします。

 『 神 』は『 無限 』を創造されたのであって、『 有限 』を創造されたのでは無い。だから、「 全てのもの 」とよく定義をされますが、これは『 有限 』に思われがちで違和感を感じるものです。
 「 すべて 」の類義語が『 有限 』で、『 有限 』の反義語が『 無限 』という事です。
 仮に、数学の集合で「 余事象 」というモノがあります。これは、「 ある事象以外の事象 」という意味です。だから、「 太陽系の余事象 」は、「 地球を除いた全宇宙 」では無く、「 太陽系を除いた限りないもの 」と理解できます。
 人類は望遠鏡の性能での「 観測 」を持って、「 宇宙 」と宇宙空間の広がりを知る小さき生命だからです。

 創造主『 神 』を定義して信仰をするのに、例えば「 太陽 」とか、「 人 」とか、偶像を指して『 神 』と呼ぶのは間違いなのです。
 創造主『 神 』は、『 無限∞ 』を創造していなければ、『 限界者 』であり、『 神 』と呼ぶ事ができないからです。

第17章『 能力 』

 輝糸銀河星雲群を出立した『 バトリス 』は、途中に都度、銀河団・銀河群の大王達と話し合いを持ち、時に戦闘をしながら、サターンからの解放をしていった。
 地獄の扉に近い3銀河星雲群には、彼の1人息子を置いてきた。全幅の信頼を置いているからである。この一帯での『 バトリス 』の人望は計り知れなく、武勇が各銀河団・銀河群に響き渡った。
 一方で、『 天界∞ 』への入口を固める『 マテリア 』、反対方向の銀河団・銀河群を取り纏める『 イリューション 』、そして『 大宇宙∞ 』の中心を抑えている『 ギルシト 』がいた。

 輝糸銀河星雲群・聖霧銀河星雲群・赤色銀河星雲群には、『 バトリス 』の息子である『 バトーリウス 』が100万の大天使長達と守りに当たっていた。
 その間、輝糸銀河星雲群の大王の子女である、聖女『 光の中の大地に打ち寄せる波の旋律(省略: シャインドコーストサウンス) 』は、この星での年齢が22歳を迎えていた。この星の年齢はその魂の成熟度で決まり、どんなに成長に時間を長く要しても、どんなに成長に時間を短く要しても、その年齢の重ね方は自然の摂理が決めるものであった。

 『 バトーリウス 』と聖女『 シャインドコーストサウンス 』は、逢瀬を重ねて、暫らくすると聖女も心を彼に開いてきて、時折、純真で素直な笑顔を彼に見せる様になった。
 『 バトーリウス 』は初めから、彼女を見初めていたので、当然、大王シャインドストレイトエルも2名の交際を温かく見守っていた。彼は父『 バトリス 』に似て剛の者で、無骨であったが、『 大宇宙∞ 』との混血という事もあり、その産まれた時から不思議と特殊に持ち合わせた『 神力 』と『 大自然に横たわる現象を理解する力 』に長けていた。
 相手の気持ちを察して、『 大宇宙∞ 』の住人の心の機微をよく悟り理解した。

 或る日、聖霧銀河星雲群が突如、悪魔の攻撃を受けた報告が入った。数は10万ばかりであるとの報告である。
 大天使長達は直ぐに応援に駆け付けるべきであると『 バトーリウス 』に提言した。しかし、彼は思慮深く考えていた。これは揺動ではないかと。彼の能力に、「 推察力 」「 予測 」「 未来予知 」等、複数の状況を推察する能力がある。
 彼は徐に椅子から立ち上がり、『 神 』に祈りを捧げた。そうして、あらゆる自然摂理と銀河星雲群の地理的な配置と、守りの堅め方を読み取ると、大天使長10万ばかりに「 付いて来い 」と言い、ある1方向の銀河星雲群の外の宇宙空間を目指していた。後の大天使長達は、守りを固めて待機する様に仰せつかった。
 『 バトーリウス 』の直感が正しければ、その方角に悪魔達の本隊が隠れていて、物見と迎撃を兼ねてのものである。

 外の宇宙空間に彼等が出ると、悪魔の10将に率いられた600万ばかりの数の悪魔達がいた。
 悪魔達の10将達は、慌てふためいたが、「 見破られたか。流石はかの貴女の血縁の者よ。ミカエルがいなければ、討ち取っていたものを 」と言い捨てて、悪魔達を連れて撤退を開始した。
 『 バトーリウス 』はそれを見て、「 汚いやり方をする悪魔達め 」と言い、輝糸銀河星雲群へと戻って行った。

 宮殿に戻ると、大王シャインドストレイトエルは、彼が彼の父に似て、その豪傑さと思慮深さを兼ね備えた者であると称えた。

 悪魔の10将は、『 イリューション 』のいる反対側銀河の方に向かいながら、外見は物売りの婦人達の姿へと変えていた。悪魔達は、物売りの婦人達に化けて『 イリューション 』に近付き、『 イリューション 』の命を狙おうとしていた。
 あの町の大通りにいた男達こそが、悪魔であり、一部始終を見ていて、10人の聖なる婦人達に変装をして、『 イリューション 』に近付き、今度は『 イリューション 』の命を狙おうとの目的であった。

 悪魔達は、反対宇宙のある銀河のある惑星に着くと、その惑星の1ヶ所に、『 イリューション 』が訪れた町を悪魔達で再現をして、『 イリューション 』がこの町を訪れてくるのを待った。
 聖なる10名の婦人達に対して、この悪魔が扮装をした10名の婦人達を、悪の10将として、その造られた悪魔達の街の悪魔の住人達は、笑い合っていた。

第18章『 自己と他者 』

 人は小さな生き物です。分業をして生きていて、その分業が断たれると必ず混乱を来します。
 人の強さとは何でしょうか? ちからの強さ、腕力の強さでしょうか? 知識や勤勉さでしょうか? 人望や人気でしょうか? 仲間の多さでしょうか? 優しさや家族愛でしょうか? 異性との交遊関係の多さでしょうか?
 やはり、人を助けられる能力ではないのか。いや、恐らく武器や人員の多さだ。いいや、最新設備で最先端を行っていることだ。色々でしょう、個人的意見としては。

 仮に、人が他惑星に宇宙船で辿り着く事が出来て、そこで新生活を始めたとします。
 地球からは何も持って行っていません。では、先ず食べ物をどうしようか、電気をどうしようか、家をつくらないとならない、移動するのに自転車や車がいる。結局、人は一人では何も出来ずに、他者の持っている技術や能力で自分に出来ない仕事をして貰って、それにより分業で生きていられるのです。
 上記の状況で、先ず、食べ物を食べるには材料がいる。地球からコメの苗を持ってきた。
「 さあ、コメを育てよう、秋に食べ出したい。確か、湿地帯で育てるんだったな 」
「 何とか、コメは豊作だ。刈り取って食べよう、どうするんだ? 」
「 来年の為に、コメの苗を取って置こう。 さて、どうしたものか 」

 電気を興して、電灯を灯して夜も明るくないと何か怖い。電気はなんだ? 電流と電圧と抵抗が何たらかんたら。電化製品を作るには、外装と内装と配線と基盤と半導体がどうのこうの。
 移動する手段が欲しいから、自転車を作ろう。先ず、鉄を精製するのはどうだった。チェーンの構造は。タイヤとホイールをどうして造るか。ギアとチェーンをどう固定しよう。そもそも、部品を固定する為のボルト、ナット、ネジを作らないと。
 これらは個人が全て持っている技術ではありません。それぞれの専門家が居て、とてもスポーツの一流選手では、造る事すら出来ないでしょう。

 個人的な強さとは何だと考えると、先ず自分の身体を支える事が出来る事ではないか。仮に、人が鉄棒にぶら下がって、その懸垂の能力を競うとする。鉄棒から落ちてはならない、という場合もあります。
 仮に、木登りをしていて足を滑らせて、高い位置で木の枝にぶら下がっていて、地面に落ちたら怪我では済まないという場合などです。その時、自力で木の枝に登り、自力で自分の身体を助けないとなりません。又は、人を助けないと成りません。
 身体の大きな人は腕力が強いものだが、持久力に欠ける。身体の小さな人は、腕力は小さいが燃費が良く、少量の食料で暮らせて、更に仕事効率性が高い。

 人それぞれです。生まれ持っている先天性の能力と、個人で努力をして得た後天性の能力を高める事が重要だ。
 だから、スポーツでも、個人種目と集団競技のどちらが得意かでわかれる。身体の大きな人は集団競技に一般的に向いていたり、身体の小さな人は個人競技が向いていたり、瞬発力と持久力とでまた人は適正のあるスポーツを選ぶべきである。
 「 好きこそものの得意 」はあります。

 自己と他者。その関係は「 持ちつ、持たれつ 」なのです。自己の得意分野では最先端の技術を活かして他者に恩恵を与えて、他者の得意分野では最先端の技術を教えて貰う。
 これは、少し詭弁です。競争社会という側面もあるからです。競争社会では、自分の知識と技術は、他者に教えたく無いという事もあります。他者にそれを教えると知識と技術が盗まれて、自己の生活が成り立たなく成る可能性があるからです。
 しかし、実際生活として、食料は一番大切であり、生活必需品と快適な生活を維持するライフラインや電化製品やインフラ、等は最低限でも必要不可欠です。
 どんなにお金を持っていても、最終的にモノを売ってくれない場合、モノが無い場合(インフレを含む)、自分で何とか手に入れる必要性があります。それが最終的に出来なくなる事も、地域性ではあるのです。

 皆様にとって自己は1番大切なのです。しかし、教える喜び、人を育てる喜びというものもあります。そうすると、感謝として自分に帰ってくる場合もあるからです。
 その様にして、自己が育てた他者が育って行くのは、楽しみでもある反面、嫉妬心を抱き憎らしいと思う事もあります。それが自己と他者の関係のバランスです。
 そのバランスは、やがて自己に最高の栄誉として返ってくることもしばしばです。
「 彼は成功をして憎らしいが、育てたのは私だ。何故、彼は私に礼を言わないのだ 」
よくある人間社会の構図です。
 個人的には、厳しく背中を見せながら厳しく育てて頂いた人を、よく思い出します。厳しさの中にも優しさを垣間見れるからです。その厳しさの中に「 愛情 」があれば、だれでも気付くものです。
 結局、印象が一番ものを言います。その時の状況や感情や精神です。朝なのか、昼なのか、夜なのか。晴天なのか、雨天なのか、雪なのか。過密なのか、暇なのか、手狭なのか。

 『 神 』とは、そういうものであると思います。『 自然環境 』もそうです。自己の努力次第なのです。努力次第では、自己に恩恵として返ってくるものです。

第19章『 真実の世界(SF) 』

 この世のモノは全て、創造主である『 神 』が、何時の時とも知らずに創造なされた。
そうして、それは常に増大しながら、創造を今でも繰りかえしている。
 創造とは、一度、創ってしまって終わりでは無い。世の中には「 変化 」が存在しているからだ。初めに『 神 』によって創られた世界が増えて行き変化をしているのもまた、創造ではないでしょうか?
 その例が、物質と空間と時間の移り変わりです。常に時間が刻一刻と移り変わり「 流れて変化 」をしている中で、仮に、物質がその時間の流れの中に存在していないとしても、何らかの「 拡張 」なりの変化が必ず起こっている。

 「 物質 」は人が初めて文化を通して理解を出来た産物です。それは「 空間 」と「 時間 」が難しい要素であったからです。人が原人であった時に、未だ知能が拙く、モノを目で見てそれを認識して、名前を付けて行った。それが現代、約1万年後では地球上だけでも繁栄をしてモノが複雑に「 変化を遂げて創造 」をされている。
 これは一見、人が素晴らしい進化を遂げて、アイデアと知能を発達させてモノを「 創造 」している様に思えて、本質は違う所があります。創造主『 神 』は「 空間 」「 時間 」を使用して、人に思考を与えているからです。
 時間の経過と共に、地球上では何かが人により製造されている。その思考も創造主『 神 』によって与えられていて、常に思考を繰り返している側面もあるからです。
 「 いや、違うよ。俺は自分で考えて行動しているよ。『 神 』は関係ないよ 」という人も殆どかと思います。しかし、閃きと発達はどこから起こるのか? これは創造主『 神 』による「 知恵と知識と見識 」等の付与によると思われる。これを進化と呼びます。

 進化は、「 種 」の変化、「 技術 」の変化、「 思想 」の変化、その他の多様性が考えられます。人が例えば脳で考えた事は、突然に飛躍的に進化を現代はしています。その上で、その思考はどのようになされているかは科学的には理屈を付けて説明をされていますが、間違いと真実の発見を繰り返して、常に高みへと進化をしています。
 その進化は、人の為す技では確かに人が行ったと考えるのも一理あるのですが、では動物達や植物や昆虫に至るまでは、どうでしょう。それらの「 進化 」は彼等のちからなのでしょうか?
 これは、太古に地球が出来た時から現在に至るまで、無機物で満たされていた地球上に1つの有機物を創造主『 神 』が創られてから、次々に進化と種の多様性により、増えて行ったものです。そうして、動物への魂の付与がなされました、創造主『 神 』により。

 今、著者がこの物語を書いているのも、私が書いている様で、PCのキーボードを打つ手の指の動きと思考と閃きは、私の日頃の努力と鍛錬に思えて、『 神 』による付与に思われます。
 何故ならば、著者の魂が与えられたのも『 神 』による膨大な確率の中の選択であったからです。1個の精子と1個の卵子が結合をして、今の私という生きている人を形造っている。もし、その1個の精子と1個の卵子が、別のものであったら、それは今の著者を形造っておらずに、別の何者かであったに違いないからです。少なくとも、1億分の1くらいの確率は最低でもあったはずです。
 これが、「 空間的 」「 時間的 」「 物質的 」な物凄い確率の選択から産まれた赤ん坊である著者であって、成長する過程での食物の摂取から始まり、苦労や努力を経て全ての要素である著者がいます。皆さまがいます。
 それを創造主『 神 』による創造の継続と見る事ができます。

 そうして、仮に生命の宿る地球以外の惑星があって、その何らかの滅びの日を迎えた時に、その惑星は生命の終焉を迎えます。一方で、「 物質 」は再製をされてまた違う銀河なり、惑星を形造り、そこに新たに生命の息吹を見る事もあります。それもまた、創造主『 神 』による新しい創造であると思います。

 少なくとも、『 無限の大宇宙 』は人が支配して、人主導で世の中が動いているはずはありません。「 全てが、人のもの 」では無く、『 無限の大宇宙 』に住む・生きている皆のモノであり、創造主『 神 』からの贈り物であり、貸して貰っているものです。
 だから、地球上でもある1種の動物が、種の絶滅を繰り返したり、種の存続を図って遺伝子を繋げている、両方を見受けられます。何も、人の数十万年の歴史だけでは無く、他の動物・植物も地球上で生を受けて、種を繋いで、今日まで生きてきている。
 だからこそ、傲慢に成らずに、謙虚に『 平和 』を重視して、その『 神 』からの贈り物を大切にするべきです。
 何故ならば、「 破壊 」は、「 物質 」「 空間 」「 時間 」を通して『 創造 』をなされた創造主『 神 』への侮辱だからです。

 人はとかく傲慢に成りがちであり、欲望のままに自己中心的に生きるものです。アダムとイヴの様に、創造主『 神 』の「 禁断の果実 」に手を出そうとしてはなりません。『 神 』が与えたものは、決して運命を変えたり、盗もうとしてはならないのです。

第20章『 幻惑 』

 輝糸銀河団を出立した『 神 』の第4王子『 バトリス 』は、黄金銀河に向けて大天使長達と移動して、近くの銀河団・銀河群に対して『 神 』の栄光を取り戻して行った。
 途中、銀河団・銀河群の大王達を、『 バトリス 』本人、または大天使長達の遣いを持って説得して、または悪魔達の潜む銀河団・銀河群と交戦をして、それを行って行った。
 一方で、反対宇宙の方角に居た『 神 』の第7王子『 イリューション 』も、それと同じ事を黄金銀河団に向けて進軍していった。50万の大天使長達と共に。
 どちらも、簡単に進軍を出来て破竹の勢いであった。

 『 イリューション 』陣営では、若い大天使長に老練な大天使長が混じり、一切の乱れの無い動きをしていた。
 1つの惑星が存在していた。そこから、使者が『 イリューション 』の元に来ていた。
「 『 神 』の第7王子殿。あなたの栄光は群を抜いて天高きところにあります。貴女をおいて他に能力の優れた方はおりません。是非、惑星に立ち寄って下され 」
使者がそう申した。
 使者が余りにもしつこく誘うので、『 イリューション 』は10名ばかりの大天使長達を伴って、ある1つの惑星の大地に降り立った。
 大地の空気は爽快であり、澄んでいる。小鳥はさえずり、青空が透明な濁りの無い雲の無い永遠のレンズの様に見えて、森林と遠くの山々が霞んで見えた。

 『 イリューション 』は草原の丘の上に立って、この惑星の豊かさを知って、純粋な心に感銘を受けていた。
「 『 イリューション』殿。どうですか、我が惑星の豊かさは? どこの銀河にも、このような惑星は存在していません。この惑星は『 大宇宙∞ 』随一の豊かさです 」
使者が彼の横で、雄弁に語っている。
 使者が、惑星で採れた黄金や宝石でできた装飾品を、彼に宝箱いっぱいに持って来させた。その宝箱の数は多く、『 イリューション 』は1度受け取りを断ったが、使者がどうしてもと言うので、大天使長達に「 受け取っておけ 」と申した。
 大天使長達も互いに顔を見合わせて、その余りに光輝く宝箱を見て「 では、折角だから貰っておくか 」と口々に、呟いていた。

 使者が、「 町をご案内致します 」と申したので、彼はそれに従って10名の大天使長達を伴って、使者の後を付いて行った。使者達の顔は、和やかな笑顔を称えている。
 『 イリューション 』も気持ちが良く、周りの大地の緑や川のせせらぎを見ながら歩みを続けた。後ろに続く大天使長達は、頂いた宝石の装飾品で1番綺麗なモノを、それぞれに身体の何処かに付けていた。
 道を進んでいくと森があり、獣道を通過して見晴らしの良い草原に出た。『 イリューション 』の胸は高鳴って行った。見た事のある光景と風景である。
 恒星の光が燦々と降り注ぐ下、懐かしい城址と街並みが見えて来た。彼の口から驚嘆の声が発せられた。「 あの何時かの惑星ではないか? 」と彼は勘ぐっていた。

 町の家々の間の小道を抜けると、大通りに出た。『 イリューション 』の胸の高鳴りは最高潮であった。「 あの町だ 」と彼は確信をした。
 町の街道の両脇には、果物や野菜、魚や肉、日用品を売っている出店が沢山ある。彼は女性達の姿を目で探した。使者が城址の方角に歩みをしていて、彼と大天使長達は、町の中心部へと連れていかれている。彼の甲冑は恒星の光を反射して、王冠(ティアラ)は飾られている宝石類の透き通った面の乱反射で、町を彩った。

 町の大通りの城址近くに差し掛かると、『 イリューション王女さま 』と言う甲高い声が聞こえた。彼は咄嗟に振り向くと、彼女をいつぞや介抱をしてくれた10名の年配の女性達が固まって立っていた。
 彼は懐かしさのあまりに、女性達に駆け寄って行き、抱擁を交わした。女性達もそれに応じて、彼女に抱き着き頬に口づけをしてきた。
 太陽は燦々としていて、その光が永遠に思えた瞬間、『 イリューション 』は脱力感と危険を感じて、女性達から瞬間的に後ろに飛び跳ねて退いた。

 急に辺りが暗くなり、暗黒に堕ちて行った。『 イリューション 』は、「 大天使長 」と叫んで、その場から離脱しようと試みたが、暗黒の渦が絡みつき、どうしても惑星から抜け出せない。
 次々に悪魔が襲い掛かってくる中、大天使長10名が応戦をしている。『 イリューション 』は、『 神 』の雷を一気に悪魔達に走らせたが、次々に悪魔達はそれを乗り越えて襲い掛かってくる。
 応戦していた10名の大天使長達が息を引き取って、『 イリューション 』1名に成って彼が死を覚悟したその時。聖なる大天使長『 ウリエル 』が暗黒の渦を掻き分けて、『 イリューション 』の腰を抱き上げ、剛剣を一蹴した。
 光の閃光が周辺の悪魔達を尽く打ち砕き、立て続けに『 ウリエル 』は『 神力 』をありったけ込めた光の大きな光球を無数に悪魔達に落として、暗黒の渦から離脱した。

 2名は、宇宙空間に居た。『 イリューション 』は無傷であったが、聖なる『 ウリエル 』は大怪我を負って、『 イリューション 』を腕に抱きかかえて生気無く、漂っていた。
 悪魔の10将が追撃をしてきた。そこに『 ウリエル 』の大天使長100万が来て、悪魔の10将を散々に打ち負かした。
 悪魔の10将の内、4名は討ち取ったが、6名は逃げて行った。

 『 イリューション 』は、傷付いた聖なる『 ウリエル 』の傷を彼の偉大なる『 神力 』で癒して、自らの連れて来た50万の大天使長達の元に帰り、聖なる『 ウリエル 』の傷の回復を待った。

 逃がした悪魔の6将が、悪魔の大王サターンにその事を告げると、サターンは悪魔1,000万を持って、奇襲攻撃の準備を始めていた。

第21章『 挟撃 』

 純紫銀河団に戻った『 神 』の第7王子『 イリューション 』は、ヴァイレットピューアエル大王の母星の大宮殿の1室を貸してもらい、聖なる大天使長『 ウリエル 』をベッドに寝かしつけた。
 『 ウリエル 』は傷付いていたが、安らかに寝ている。旗下の大天使長達が心配そうに見守っていた。

 大宮殿の大広間に戻った『 イリューション 』は、ヴァイレットピューアエル大王と事の次第を話していた。そこに、偵察の大天使長から、『 イリューション 』に連絡が入った。サターンが物凄い数の悪魔達と、この銀河団に強襲を仕掛けてきていると。
ヴァイレットピューアエル大王は、彼に申した。
「 第7王子殿。加勢を御願い出来ますか? 」
それに応えて、『 イリューション 』は言った。
「 私が招いた厄である。私が、戦わせて頂こう。直ぐに、黄緑銀河団と黒目銀河団の2大王に連絡を取り、宇宙空間でサターンを迎え撃つ 」

 『 イリューション 』は先行して、宇宙空間へと50万の大天使長達と出て行き、サターンの軍の後方に、布陣をした。悪魔達はそれに気付いて、1匹、また1匹と蹂躙してた惑星から宇宙空間へと出て来た。そうして、サターンもとうとう、その姿を現した。
『 イリューション 』は、50万の大天使長達と、サターンの軍を前にして後方に誘導する様に、悪魔達を銀河団から引き離しに掛かった。
『 イリューション 』と大天使長50万が最大限に後方に下がった所で、その両脇に黄緑銀河団オータンフォレストエル大王の兵1,000万、黒目銀河団アイブラッドエル大王の兵700万が布陣していた。

 サターンの悪魔達が正面から総攻撃を仕掛けてきた。正面で大天使長達と黄緑銀河団の兵と黒目銀河団の兵が、悪魔達の攻撃を受け止めて、『 イリューション 』が巨大な光輪を悪魔達の上に造り、光の直線のビームを無数に落とした。その攻撃をサターンが暗黒の魔術の暗黒の傘で受け止め、弾き返している。
更に、『 イリューション 』は光の魔獣ユニコーンや聖なる白龍を召喚して、悪魔達に当てて行った。サターンはそれに対して、地獄の門を開いて、更に悪魔達を宇宙空間に迎い入れた。
大天使長達と2大王の前線が崩壊しそうになったその時。遠く、サターンの布陣している所の後方に大きな光の門が開いて、一瞬の間に大天使長達がサターンの後方に現れた。

『 神 』の第6王子『 ギルシト 』と500万の大天使長達であった。
『 ギルシト 』の中央の大天使長は300万、右舷の『 ギルーシトス 』の大天使長は100万、左舷の聖なる大天使長『 ミカエル 』の大天使長は100万、である。
『 ギルーシトス 』の右舷が突出して、悪魔達の後方から攻撃を仕掛けた。悪魔達は混乱をして、「 キィー 」と鳴き声を上げている。
『 ミカエル 』の大天使長達は、悪魔との距離を詰めて、聖なる『 ミカエル 』の光輪が膨らむのを待っている。それが膨らみ弾けると、悪魔達は散々に倒れて行った。

 サターンは冷静に、『 ギルシト 』に言い放った。
「 久しぶりの顔だな、『 ギルシト 』。前は、小僧であったが、魂が大きくなったな 」
『 ギルシト 』はそれに対して、申した。
「 サターン。罪の無い者達に、無暗な攻撃を繰り返して来て、許しがたい 」
『 ギルシト 』は300万の大天使長達を前進させた。『 イリューション 』は『 ギルシト 』が来た事を直ぐに魂で悟り、10万の大天使長で『 ギルシト 』の大天使長と、サターンを挟撃した。

 大天使長達は果敢にサターンに四方八方から光の波動で攻撃して、サターンを討ち取ろうとした。しかし、サターンは巨大であり、なかなか傷を負わす事が出来ない。
『 ギルシト 』が前に出て、『 『 神 』の聖なる祈り 』を詠唱した。サターンはそれに対して、『 ギルシト 』の心を暗黒に染める「 ことば 」を吐き、『 ギルシト 』の身体のそこいらじゅうを触覚で触っては、鋭い物理的攻撃を仕掛けて来た。
次第に、『 ギルシト 』の魂が限界に近付いて暗黒に染まろうとしてきた時、サターンの後方に辿り着いた『 イリューション 』が『 ギルシト 』を横から抱きかかえて強引に戦線から離脱をさせた。

 サターンは「 歪な笑い顔をして、顔をクシャクシャにして楽しそうに勝ち誇り 」、悪魔達を伴って引き揚げて行った。

 残された銀河団の兵達は散々であり、『 イリューション 』の大天使長達も25万ばかりであった。
『 イリューション 』は、幾つかの行動で、『 ギルシト 』に叱られると思っていたが、『 ギルシト 』は「 助かった、『 イリューション 』。 君がいないと堕ちていた所であった 」と述べて、感謝の意を示した。
しかし、2王子とも、決して弱気では無く、『 神 』への忠誠心を失う事が無かった。

 純紫銀河団、黄緑銀河団、黒目銀河団の3大王が来て『 イリューション 』に礼を申すと、「 兄君であらせられますか? そのお方は? 」と改めて礼を『 ギルシト 』に申した。

第22章『 高潔と堕落 』

 現在の地球上では、純粋に高潔な人は少ない。産まれた時から恵まれていた環境であり、尚且つ、その成長過程で余程の人格者達に囲まれて生きなければ、大人に成る頃には心が汚れている、穢れてしまっている。
 人は、正義感を持っている。他者の行いを、その正義感で測り、自らの行動や傾向を導き出す。これには、人の所属している組織の忖度が含まれると、その正義感は薄れてしまう。
 では、高潔な人とは、プライドが高い潔癖な人なのでしょうか? これは多少、高潔の意味とズレていると考えられます。
 人間社会で生きて行くには人と接しなくては成りません。接した人が悪意を持って他人を貶めている様な人でも、必ず何らかの接点を持たざるを得ない時代です。清い潔い人物とだけ付き合う訳にはいかないのです。現代は。
 そこでの対応は、人としての資質を問われます。悪意に悪意で返すと、その人も悪に染まるからです。悪意を持った人に対して、如何にその人の行っている悪意的行動が間違っているかを正す事が出来る人が高潔な人ではないか。
 仮に、相手が人に危害を加えて来た場合に、その被害者はそれを超す危害で答えてはならず、また、一切の加害をしては為らないのは、よく言われる高潔な考え方です。一方で、自らが儲かるからと言って人の生命を脅かしたり、迫害をしたり、人から訳も無く集金をしては為らないと考えます。
 他人を食い物にして生きてはならない。他人の権利を奪ってはならない。他人から意味も無く集金をしてはならない。他人のモノを欲してはならない。自らが既に持っているモノを過剰に欲しては為らない。他人を罠に嵌めて、その肉体や持ち物を奪ってはならない。他人の意見を尊重して、自らの意見も主張して、柔和を図らないと為らない。
 高潔な人の最低条件です。
 人は1度、堕ちてしまうと、堕落の道を歩む事がある。一方で、その教訓を活かして、新たな自己を形成して、1度汚れてしまった身体や思考により高潔な道を歩む人もいる。
 その高潔さは、やはり自らの穢れを嫌い、自らの暴力を嫌う。
 仕事上で暴力を使う人は、必ず暴力を持って私生活を送る。性暴力も一緒です。反対に、仕事上で暴力と無関係な人は、暴力と離れた位置にいる事がある。
 暴力とは、人が人に危害を加える事も言うが、人に暴力の指示を出す人はもっと暴力的な人だ。例えば、軍隊だ。
「 自ら好き好んで戦っている訳では無い、復讐なんだ。誰かが目立っている、輝いている、栄光に満ちているから、能力が長けているから、人の持ち物が欲しいんだ、人への評価を捻じ曲げたいんだ、人への愛を奪いたいんだ 」と言った感情は、完全なる悪だ。
 堕落を考えると、それは正しい事、自ら持ち合わせている正義感が無くなり、悪の行為を認める事ではないか。人が堕落すると、外見とかでは無く自らの内面の穢れに気付かなくなる。そうして、他人の諫言に耳を傾けて、人の権利を無視して、より利益の高い方に傾向して、大きな組織の中にいて安心をしていたいという気持ちに成る。
 その良い例が、他人に全ての事象の責任転嫁をする事であり、これは自分可愛さの表れである。間違った事は、間違っている。真実と、決め事と、教えられた事は、必ずしも合致していない。
 教育を信じて、それが正しいと言い張る事は、世の中を知らない事だ。世の中の人には、それぞれに意見があり、人格があり、生活があり、感情があり、愛がある。
 師は、弟子にその状況判断の仕方を教えて、相手の気持ちをおもんばかり、自らが行う行動を正しい状況判断の上で採る必要性がある。

 例えば、ある人が携帯スマホでゲームをしているとする。それは個人の自由である。しかし、高潔な人は、その利点と不利益を教えて、あとは人の判断に任せる。家族ならば、携帯スマホゲームは目を病むし、時間の無駄だよと言うかもしれないし、いや、それはストレス発散と頭の回転を速くして気軽に出来るエンターテイメントとしては最高だよ、と言う人もいるかも知れない。
 スポーツを趣味でしている人は、健康面を気にしている、体型を気にしている、楽しんでいる。ストレスを発散している。だが、それが高じすぎるのも問題だ。何故ならば、スポーツをする事での身体的な欠点も存在しているからだ。
 結局、それらをバランス良く経験をしてみて、確固たる自分を形成する事を皆が心の何処かで目指したいと考えている事なのではないか。理想の自分に近付く為に。
 高潔と堕落は、純粋さと穢れとも似ていて、異なる。純粋な人には穢れにより堕落が待っているかも知れない。純粋さを失い、快楽や人を嘲り笑い見下す行為を平気でやってのける。しかし、人への愛は残っているはずだ。愛とは快楽では無く、思い遣りである。それに気付くには、成長と時間を要するが、穢れに深く浸かってしまうとその穢れが身体から取れなくなり、更なる穢れを欲望の内に心に抱いて探求をする。
 しかし、自らの穢れを悔いる人も居て、その穢れを恥じて正義感を取り戻し、自らの正常な判断力を取り戻し、より高みを目指す者もいる。
 高潔とは、純粋や潔癖とは異なり、やはり正義と真実を貫き、例え怖くとも間違った行いを正そうと努力をする人の事を言う。
 堕落とは、自らが間違っていると知っている気付いているのに、自分自身を胡麻化して更なる間違いを行う人を言う。
 大抵の人は、この間を行ったり来たりしている、葛藤を抱えている人である。

第23章『 時間と空間と物質 』

 自己と他者をおもんばかる事は、全てを超越することです。自らが1番理解しているのではないか?

 時間的制約と空間的制約とはなんでしょうか? 例えば、自己という身体が存在していて、その身体の至る所が同一空間上に、物質的な身体として存在している。
 例えば、或る人が或る時間に、日本国の『 名古屋 』から『 大阪 』に新幹線で向かっているとする。その新幹線は『 京都駅 』に差し掛かっている。その或る人の身体は『 京都駅 』にあり、30分後には『 新大阪駅 』に存在していると予測出来る。
 その新幹線の200km/hの旅で、「 0.01秒後 」の自らの身体は、10cm空間的にズレていたとする。加速度により、多少、変形している身体で。
 ごく当たり前の現象である。

 では、30分後にいるであろう自己は、必ず自己と同じ身体で「 新大阪駅 」に存在しているのであろうか? その時間の景色を見た脳の思考や行動で、30分後の自己は多少異なる自己であるはずだ。
 これは同一のモノ・人は、同じ時間的な流れの中で、存在が出来ない事を現わしているのではないか。大きな意味と狭義で、あるモノは、時間的変化とともに座標を変えて物質的な変化も遂げる。これは仏教では『 栄枯盛衰 なのか 諸行無常 』なのかである。
 『 大宇宙∞ 』の銀河系の中の太陽系も高速で移動をしている。
 誰かに再会をした時に、「 久しぶり 」と言う言葉を掛けます。しかし、お互いに、認識していた過去の自らと相手は、既に少し異なる時間的・空間的・物質的変化を遂げた者同士なのです。
 これが宇宙的な、『 時間 空間 物質 』の解釈です。

 『 大宇宙∞ 』に2つとして同じ状態のモノは存在していない。例えば、自動販売機で販売している缶コーヒーから果てはTVに至るモノまで、人は当然に、2つとして同じ状態のモノは存在していない。
 これは究極的に言うと、自己も同じ自己は、過去から現在まで存在をし得なかったと言う事もできます。
 何故なら、缶コーヒーは構成要素を考えると、プリント缶とコーヒー水で形成されている。これは、より精度の高い技術で、コピー製品を製造している事です。連続的な機械で、電気的・機械的に設定されたコーヒー水を、同じ様に連続的に成形されて絵柄をプリントされた缶の中に流し込み蓋をして造られている。
 購買者は、それを130円で購入して、飲んでいる。または、TVは部品点数が非常に多いものを組み立てているので、同じ機種でも全く異なるものです。より精度の高い部品を作り上げて、それらを組み立てる。これは業界では当たり前の事です。

 一方で、元素など、ごく微細なものから素粒子と言われる存在しか判らないものまで、その形や質量や速度や外形など、果たして同じであろうかという疑問も湧く。
 元素なら未だしも、素粒子が形や質量や速度や外形が微妙に異なっていたら、大問題だ。2つの考え方がある。
 創造主『 神 』は、構成要素を全く同じ形・質量・外形で作り賜れた。これは、創造主『 神 』ならばいとも簡単な事である。
 創造主『 神 』は、構成要素を全くそれぞれ異なる形・質量・外形で敢えて造り賜れた。それぞれを慈しむ為に、または見分ける為に。
 これこそ、創造主『 神 』の偉大なる『 能力 』なのではないか。ここで言う創造主『 神 』とは、必ずしも人が言っている全知全能の名前の付いた『 神 』ではありません。もっと、崇高で『 天界∞ 』のいと高き最高の座におられる存在としてです。

 そもそも、物質同士が干渉をし合う中で、超重力の元では、空間・時間は捻じ曲げられる。当然、物質も捻じ曲げられるのではないか。そうして、それに速度も加わると、慣性が働き、どんな微細で強力な素粒子でさえ、その高速の元では、微妙に形や質量を、時間的・空間的・物質的に変えて来る事があるはずである。
 それをもって、創造主『 神 』による『 時間 空間 物質 』のコントロールと思われる。これにそれらを超越した『 魂 生命 精神 その他 』が絡んでいて、複雑な創造主『 神 』の無限∞の創造の調べであろう。
 創造主『 神 』は太古の昔に、創造をされた事は言うまでも無く、今現在をも少なくとも『 大宇宙∞ 』のそこかしこで創造を続けていると解釈できる。

 だからこそ、『 神 』は全てのものに、平等であり、人に対しても善行には恩恵を与えて、悪行には罰を、人の法を超えてお与えに成っている。  それは、どんな小さなこの地球上の権力者でも許されず、創造主『 神 』の取捨選択の中にあり、権力者の傲慢を許さず、永き人の6,000年間の歴史の中でも、栄枯盛衰を来たしている原因に成っているはずである。
 人は小さき生命であり、だからこそ自らを大きく魅せて他者を傲慢に扱い、その対にある人の謙虚さに付け込んだり、詰まらない抑圧をして、我こそ最高なりと地球惑星上で傲慢に叫ばせているのではないか。

 小さき人のエゴと傲慢を、遥か高みの『 天界∞ 』から全てを見通しながら。創造主『 神 』からしたら、人の傲慢や知ったかぶりを、やはり快く思っていないところが真実なのです。創造主『 神 』を定義したり、あれこれ詮索する事が馬鹿げていて、真実の創造主『 神 』への信仰と祈りを、ただ、純粋に人はして、天命を待つ事です。

第24章『 平和 』

 『 大宇宙∞ 』で戦闘が行われている中、創造主『 神 』のおられる『 天界∞ 』の住人達は、平穏な生活をしていた。時間の永久の流れに乗り、天使達は光の空間を飛び回り、各地にある神殿では『 神 』への祈りが行われて、それぞれの宮殿では祭り事が行われていた。  若い天使達は輪郭を描き消す光の反射をあらゆる角度から受けて、戯れと共にそれぞれの姿を輝きの中で見失ったり、突然に姿を現わしたり、『 神 』の恩恵はそこに住む住人全てに平等に与えられていた。

 その中心部である最上層の大宮殿では、『 神 』の第1王子が『 天界∞ 』全ての祭り事を偉大な大天使達や、『 神の王子達の子 』らと行っていた。
 大宮殿はその端が見渡せない程に広く、天井の高さが果てしなく高かった。大宮殿の外の煌めきもさることながら、宮殿の内部にも光の粒子が満たされていて、そこにいる者達の陰影でさえ搔き消されて遥か天井から床に至る全ての存在が満ちた光の飽和状態であった。

 『 神 』の具現化した姿は王座にあり、その周辺は粒子の様な光の結晶が方々に流れ出ている。
 階下には、第1王子、第2王子、『 スペーシタイム 』、『 ファーストオール 』、聖なる大天使長『 ラファエル 』、聖なる大天使長『 ガブリエル 』、そうして『 天界∞ 』の重鎮の者達が自由な立ち姿で、佇んでいる。

 そこに、急な使者がまるで宙を浮く様に静かに第1王子の元に来て、申した。
「 第7王子『 イリューション 』殿が、帰還されました。目通りを願いたいとの事です 」
 第1王子は直ぐにその者に、『 イリューション 』を連れて来る様に、申し伝えた。第7王子は、使いの者を先頭にして、申し訳なさそうに数名の大天使長を伴い、第1王子の元に姿を現した。
 『 イリューション 』は第1王子に対して片膝を突き、申し開きを一言だけした。その言葉は、他の者達にも思念として伝わって行った。『 イリューション 』に涙は無く、いかなる罰をも受ける覚悟が見て取れた。

 第1王子は彼に対して首を左右に振り、腰を落として第7王子の両手を取り、ゆっくりと立たせた。
「 この者は、信念と経験を携えて、戻って来た。誰も、この者を責めまい 」
『 イリューション 』はその言葉を聞き、余計に自らの稚拙な行動を悔やんで表情を曇らせて、恥じた。
 居合わせた皆が、彼の気持ちを汲んだ。

 階上の王座に座る具現化した『 神 』が申された。
「 第7王子は大いなる傲りを持って出立をして、多くの失敗を通して帰って来た。その魂の経験は計り知れないものであり、更なる清い澄んだ正義の心を魂に得たであろう。純粋な心こそが『 天界∞ 』の者の証である 」
 第7王子は、階下のその場で片膝を突き、胸に掌を充てた。すると、『 イリューション 』の身体全体が灼熱の様に熱くなり、魂が膨れ上がり大きくなるのを彼は感じた。

 『 イリューション 』が申し上げた。
「 兄『 ギルシト 』を銀河団・銀河群に残して来て、守りを固めて貰っています。直ぐに、自らの宮殿に戻り準備をし直し、助力に戻りたいと考えています 」
 それに対して、『 神 』はその通りにする様に、彼に申し伝えた。
 『 イリューション 』はそれを聞くと、姿を消して、自らの宮殿に戻り、彼を慕う大天使長達に二度と同じ過ちを侵す事が無い様にと、自らの長い髪を切り整えた後で、皆に申し伝えた。

 彼は自室に戻り、決意を新たにして、身支度を整えていた。『 イリューション 』の着ている白色に金色の模様が施している甲冑は、その全体から光の粒子を発散させて、大いなる王子としての片鱗を見せ始めていた。

第25章『 善の心に染まる 』

 人が善の心に染まる時がある。それは肉親への愛だけの時ではない。世の中が腐敗した中で、自らの天命と役割に気付いたときである。
原因究明の時に要因解析をする方法がある。根本の原因まで何段階か遡る方法である。

 世の中が腐敗した時には、人は悪の心に染まる。では何故、悪の心に染まるのか? 信頼を裏切られた時、信じた愛を裏切られた時、正当な意見の主張が通らない時、正義を曲げられて悪が台頭した時、権力の横行と抑圧の時、嘘を真実に見せた時、貧困を救わない時、大切なモノを奪われた時、等です。
 悪に染まらないのは、自らが潔白な者です。悪に走らない法則としては、自らが穢れていない事、正義を理解している事、自暴自棄にならない事、精神的に成熟をしている事、食べ物に本当に困っていない事、自我が強い事、です。

 過去にもこんな例があります。平和を唱える有名な人物が、戦国の乱世に生きていて、馬鹿にされた事です。後に、平和の時代が来たら、その方は聖人の様に言われています。
 平和の時代が到来したら、今度は暴力的な人が疎まれて、暴力癖の人間はその行いを裁かれる。
 そうして今、正に、また暴力の時代が訪れて、平和を唱える者は淘汰されようとしています。これでは、地球規模で暴力的な人種が増えたら、地球全体が悪に染まってしまいます。
 悪の者は、人の心を無茶苦茶にする。それは痴情のもつれのような愛し合っている者同士の純情な互いに思う気持ちのもつれでは無く、例えば、性的に弱い者の身体を強引に理由も無く奪う事です。
 どちらにしろ、人間は幼稚であり、自分の意見が正しいと信じていて、それがまかり通らないと、駄々をこねて他人の大切なモノを奪いに掛かるのです。
 こう言った人達は精神的に幼稚であり、教育が低く教養が無く、ただ今迄、楽しい事だけをして生きて来たという詰まらない我慢の出来ない人間たちです。
 世の中にはルールが存在していて、道徳心というものがあります。それが無い者は、他人の持ち物や所有物を欲しがり、盗みに掛かります。そういう行為は止めて、『 平和 』の心を取り戻して、戦いを止める事が自らの命を守り、『 平和 』を尊重する『 神 』に近付く事ができると思います。

 『 イリューション 』は、『 天界∞ 』の自分の宮殿で、聖なる大天使長『 ウリエル 』の身を案じていた。先の自らの身勝手な行動の為に、悪魔達の罠にはまり、それを救いにたった1名で救いに来てくれた勇敢なものであり、その勇敢な者は『 イリューション 』の身代わりに、傷を負って今、『 大宇宙∞ 』の銀河団で身体を癒している。
 『 イリューション 』の稚拙な行いは、創造主『 神 』によって許された。これから、また銀河団に戻り、自らの身を守ってくれた『 ウリエル 』に恩を返さないとならない。
 出立の準備がせわしなく行われている中、彼女はソワソワして仕方が無かった。

 やがて、1人の大天使長から300万の大天使長の準備が整った報告を受けた。『 イリューション 』はそれを聞くと、気丈に椅子から立ち上がり、自室を出て、宮殿の大広間に向かった。
 大広間の階上に立った彼は、階下の大天使長皆に申し伝えた。
「 皆には感謝をしている。私に着いてきてくれて。もう、次にここに帰ってくる時は、サターンを地獄に追い堕とした時であると心得よ 」
 そうすると、大天使長はだれも声を上げずに、頭を下げて彼女に従って行く覚悟を示した。